虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

マラソンイベント その24



 アイプスルに帰還した俺は、さっそく目的の場所──『神・世界樹』を訪れる。

『むっ、もう戻ってきたのか』

「ただいま、風兎。イピリアは……そうか、もう帰ったのか」

『何を言っておるか。奴はまだ見習いの身、今は星の力を馴染ませるために元の世界に戻らせただけだ』

「へぇ、そういうのって必要なのか……これからもご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いしますだな」

 イピリアは一度邪に堕ち、元に戻ったうえで今度は星の力を宿すまでに成長した精霊。
 今はその力を使いこなすために、風兎の下で修業をしている。

 居なかったのでもう卒業したのかと思ったら……なるほど、必要なことだったのか。

『いったい、今回は何をしに来たのだ』

「──返礼をしに来たんだ。悪いが、祠に行かせてもらうぞ」

『! ……了解した』

 静々と下がった風兎を見ながら、俺は大樹の根元に存在する洞の中へ向かう。
 そこには神聖さを醸し出す空間が広がっており、無数の神像が並べられている。

 己の目で見た、あるいは知った神の姿を彫り上げた作品の数々。
 その中の一柱──工具を握り締めた少年の像の下で、俺は傅き祈りながら話す。

「偉大なる創造神様。お陰様で、運営側から打診が入りました。付きましては、私共から『プログレス』の原案と設計に関する情報をお送りいたします」

 神像の台座に伝えた情報が書き留められた物を置くと、目を閉じて再び祈る。
 すると瞼の裏が白く輝き、俺は神聖な力に包まれ──死ぬ。

 目を開くと、先ほどまで置かれていた紙は失われていた。
 代わりに神像の下に、神々が使う古の言語でメッセージが残されている。

 普通では読めないのだが、視界に映った言語を翻訳してくれるサングラスを装備して、文字を確認した。

「えっと……『ご苦労様。神の祝福を施しておくから、プログレスは干渉不可能なシステムとして組み込まれるよ。もちろん、君たちは例外だけどね』だそうだ。まあ、神様でも見ることはできるんだろうけどさ」

 俺に今回の案を出したのは、何を隠そう創造神様である。
 理由があるのだが……信仰稼ぎ、そしてそれを条件とした俺の強化のためなんだとか。

 俺のチートスキル:DIY:は創造神様から賜ったもので、すでに成長限界。
 しかし創造神様から直接何かをやってもらえば、性能を強化できるんだとか。

「代わりに創造神さまから運営に取り次いでくれて、初期からプログレスを配布してくれるようになるらしい。これで、全休人から情報の収集ができるようになるな……」

 俺は自分が(ギリギリ)真っ当な方法で強くなるため、創造神様は信仰を集めて力を蓄えるための共闘だ。

 ……強化された:DIY:って、どんなチート能力になるんだろう?


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