虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

マラソンイベント その23



 幸いにして、俺の犯行に関して家族からクレームが来ることはなかった。
 声は道具で変えていたし、姿は出さなかったのでバレなかったわけだ。

 いやまあ、ドローンとかもわざわざ魔物に偽装していたし、全力で隠していたけどさ。
 お陰様でタクマ以外にはバレていない……アイツはもう、見れば何でも暴くからな。

「いやー、しかし今回は目立ったな。個人が生みだした道具を、休人全員が使う……それが何を意味するのか」

《では、事前に連絡された通りに報告なされますか?》

「恩には報いることが大切だからな。報酬もこんなにたくさんあるんだし、一つぐらいは捧げものにしてもいいだろう。ただ、運営限定の品にしておきたいな」

 複製できるのは、あくまで世界に存在していた物やそれを加工した物。
 運営がシステムを利用して創り出した物はできないので、サンプルとして欲しくなる。

 今回の報酬の中には、課金アイテムセットやその他特殊なアイテムが存在する。
 俺はそれを選んで、『SEBAS』に解析させたいと考えているのだ。

「うーん……まあ、初心者部門の一セットずつの課金アイテムは確定として。問題は、それ以外か……あっ、腕輪もあるな。ずいぶんとまあ、懐かしいアイテムだ。今も使ってはいるけどさ」

 二つの腕輪──『早熟の腕輪』と『晩熟の腕輪』だが、どちらの成長率を上げられる。
 仕組みは単純、装備枠やら何やらいろいろと弄りました。

 ただ装備するだけで効果を発するので、どちらかしか装備できずとも便利だ。

「○○券とか、そういう引き換えのアイテムは解析できないんだよな?」

《はい。使用時、アイテムの識別コードを参照して景品と使用者を紐付けするだけです。景品そのものが出現するわけではありませんので、解析のしようがありません》

「そして、使ってしまった後は原理が不明になる。プライベート空間生成券は、情報によると世界間転移と同じ要領で移動するらしいな。それなら別に、アイプスルで充分だから要らないよな……」

 これまでのイベントの景品も、大半がアイプスルに帰ればどうとでもできてしまうので悩んでいた。

 まあ、それでも迷宮核やその拡張パックを交換してどうにか消化してきたんだよな。

「……これも含めて報告して、これからどうすればいいか教わればいいかな? もしかしたら、俺たちにピッタリなモノをチョイスしてくれるかもしれないぞ」

《…………可能性はございます。では、私は私なりに経験者部門の景品を選んでおくことにします。頼み事として、すべてを選ばせるというのも、引けるのでは?》

「あー、それもそうだな。帰る前までに、書きしたためる内容を考えておかないと」

 それからしばらくして、俺たちはアイプスルへ帰還する。
 そして、とある存在に今回の出来事を報告して……景品を決めるのだった。


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