虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
マラソンイベント その22
「──出番だぞ、メカドラ」
最近は銃としての活躍ばかりしているメカドラだが、本質はそこではない。
本来の名である『機星龍』の力を目覚めさせ、休人たちを阻む仕掛けに組み込む。
国家を一つ転覆させかけた、兵器としての運用が可能なメカドラ。
今回はその機能もフルに使って、休人たちに力を使わせる。
「まずは『武器化』を解除。通常機構に戻したうえで、『狂闘』を起動しろ」
『ギャォオ!』
小さな銃は質量保存の法則を無視し、その存在をドラゴンへと作り替える。
存在偽装と呼べる超技術によって成されていたのだが……ともかく、龍が降臨した。
当然、休人は大パニックになるのだが……そのどよめきも瞬時に止む。
人族の聴覚では認識できない、可聴音域をはるかに超えた高さの音が発せられた。
他にも魔力の波動や臭いなど、さまざまな方法で行われる──洗脳。
そのえげつない戦法が効くからこそ、かつてメカドラは封印されていた。
「今回の洗脳は暴れ回るのがコンセプト。仲間だと思っていた奴が、急に裏切ったら……そんな疑心暗鬼が至る所で起きるうえ、時間経過で抵抗できなくなった奴が順次洗脳されていく。本当、誰が考えたんだか」
《旦那様、動きがありました》
「うん、対応が早くて関心関心。メカドラそのものを処理するには、さっさとゴール付近に来ないとな……けど、そこまで甘くは設定していないんだよな──『守死』」
操られている休人たちが、統率された動きでゴール付近に集まる。
そうでなくとも、俺がマスター権限で罠の配置を操作して転移させて送り込む。
彼らには命懸けでメカドラを守れと思い込ませているので、使用制限のある能力なども使って守ってくれるだろう。
「でも、最後の抵抗だしな……メカドラってまだ成長過程だから、全然強くないし」
『ギャゥウ……』
「休人、『超越者』、魔物とかの戦闘データが少しずつ集まっているんだけどな。いずれは最強に至るはずでも、まだまだ足りないものが多すぎるってことか。まあ、今回はテストだと思って好きに暴れてくれ」
『ギャウッ!』
メカドラにはちゃんと兵器を搭載させているので、そちらのテストにも使える。
だがまあ、相手が悪すぎて参考にはならないんだろうな。
「──ショウに斬られ、マイに蹂躙され、ルリに諦めさせられる。そんな感じの未来しか無いからな……死ぬ前に回収するから、どうか頑張ってくれ」
俺の予想は当然的中し、休人たちはメカドラに勝利してゴールへ向かった。
……俺もこっそりとその集団に混ざり、最高位の景品を貰ったりしています。
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