虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

マラソンイベント その18



「──で、お前は次も出るんだろう? 俺の方はさすがに参加できなかったが、お前らはやっぱりな……しかも、最後は一番難易度が高い上に何でもあり。マラソンってルールを忘れているよな」

「戦闘職の方だと、もう何をしてもいいって感じがするし。まあ、もうキーシがやらかしていたし、今さらだけど」

「アイツな……例の裏『天』に関するヤツだろう? それを四つ持っているチート野郎も参加しているみたいだし、そりゃあいちいち細かいルールなんて気にしはしねぇか」

「……もともと何でもありだっただろう」

 答えからは、少し逸らしておく。
 表の『天』の権能は、どちらかというと補助であり突出はしていない。

 逆に裏の『天』は、『死天』や『破天』の権能からも分かるように、異常なまでに特化している。

 正統派か異端派かそういう違いだ。
 能力がピーキーじゃない代わりに、表の方の『天』には所持者の成長速度を上げるなんてチート効果もあるわけだしな。

「ふーん、まあいいか。お前ら家族、合流とかする予定はないのか?」

「誰が一位かで盛り上がっていたし、たぶん別行動だな。ちなみに俺は観客っていう認識だから、隠れている予定だ」

「……お前、これからのこととか考えているのか?」

「急に話題を変えてきたな……何の話だ?」

 タクマの顔は真剣そのものなので、俺も真面目に答える。
 こういうときのコイツは、俺にも必要なことを言ってくるはずだ。

「『プログレス』は運営が予期していなかった、だが確実にこのEHOの中で当たり前のように使われるであろうアイテムだ。そんなものをイベントで出したら……目を付けられるはずだぞ?」

「これまでは『SEBAS』が隠してくれていたけど、そろそろ動き始めるみたいなんだよ。俺は休日気分でまったりするから、交渉とかは任せる予定だ」

「……まあ、そういうゲームだからな。何かあったら言えよな。ついでに、どういう結果になったのかも教えてくれ」

「教えられる範囲内でならな。知ると面倒なことになるらしいから、俺も全部は教えてもらえないんだよ。ほら、こういうゲームって定番のアレがあるだろう?」

 行動はすべて[ログ]機能に記載されているのだから、それ以外の情報だってどこかに集められているだろう。

 そして、見たり聞いたりしたものがそこに集められ……情報が洩れる。
 俺は『SEBAS』が結界を張っているので、問題ないんだけどな。

「おっと、もうそろそろ始まるぞ。頑張ってこいよ、ツクル」

「ああ、最大限にアピールしないとな」

 俺以外の休人たちがやるとは思うが、そこは開発者の意地ってことで。
 ──そして、再び俺は原付きを取り出す。


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