虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
マラソンイベント その14
≪オン・ユア・マークス──セット≫
公式っぽい掛け声が流れると、引き締まる熟練者の非戦闘職部門に参加する者たち。
続いて鳴り響く空砲を合図に、いっせいにスタート地点を旅立つ。
「よし。じゃあ、俺たちも……って、もういないじゃねぇか!?」
なんてことを言いながら、隣に居たタクマも彼らと共に走り始める。
俺はそれから少しして、動かないことを条件に行使した完全隠蔽を解除した。
「異界の擬似生成か……座標指定で動けなくなる点と、逆に強すぎる相手にはバレる可能性があることを考えると、雑魚専の技術になりそうだな」
《次元の揺らぎを感知できる者は、そう多くはありません。ですが、旦那様の周囲にはそれを行える者が異様に多いように思えます》
「まあ、『冒天』に選ばれるぐらいに、強者と関わっているからな……さて、そろそろ追いかけるとしよう。秘蔵のアイテムはまだ使えないし、今回は──こっちだな」
宝石型のアイテムを一つ、[ストレージ]から取り出して原付きにセットする。
本来は一人に一つな『プログレス』、俺はその管理者権限を使ってあることが可能だ。
「──インストール開始」
《仰せのままに。最適な『プログレス』を検索……『スピードスター』をインストール開始──成功しました》
「『プログレス:スピードスター』セット、能力行使開始──“フルドライブ”!」
経験者部門に参加していた休人が使っていた、速度系能力に特化した『プログレス』。
そこに至るまでの過程を省き、固有の名を持つために必要な情報を宝石に書き込む。
宝石の中には『スピードスター』に関するすべての情報が書き込まれたため、一時的に俺はその能力を使うことができる。
……ちなみに、デメリットなどはいっさい存在しない。
さすがは:DIY:、そしてそれで生み出した最高級の宝石(触媒)である。
閑話休題
固有名『スピードスター』に発現した能力である、“フルドライブ”。
その効果は一定時間、自らの移動速度を十倍まで引き上げるというもの。
再発動時間が長いだけで、デメリットらしいデメリットが存在しない。
それを『SEBAS』から聞いており、今回の移動に用いた。
「『SEBAS』、一位との差は?」
《まず、このコースが100kmです。旦那様と一位との差はおよそ20kmほどとなっております》
「現実なら絶望的だが、こっちならまだ追いつけるな……行くぞ」
《自動制御開始──走行を開始します》
自分で運転はせず、『SEBAS』に任せて追いかけていく。
もちろん、光学迷彩も忘れていないぞ。
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