虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
マラソンイベント その13
今回も無事、目的を果たすことができた。
だがしかし、だいぶ『プログレス』を成長させている者がいるため、順位は最上報酬が手に入るギリギリだ。
──そして、そのまま戦闘職部門の方も最上級の報酬を獲得した。
なぜ詳細を省くかといえば、やったことがほぼまったく変わらないから。
キーシが空間を壊し、『プログレス』が大活躍し……ギリギリの順位に潜り込む。
光学迷彩でこっそりとゴールし、障害物すべてを原付きで躱しているのだから、仕方が無いだろう。
そして、次は熟練者部門。
非戦闘職であろうと、相応のレベルと能力値を秘めた猛者たちが集う部門だ。
本来、レベル的には俺もここに分類されるのだろうが……虚弱すぎてダメだった。
しかし、少々能力値を盛ることで強引に参加し、現在この場に紛れ込んでいる。
「……ショウもマイもルリも、戦闘職部門だから居ないんだよな。トップスリーはインタビューがあるらしいし、あとでじっくり見させてもらおうっと」
「──それはこっちにもあるらしいぞ。どうするんだ、お前は」
「なんだ、タクマかよ。お前って、そういえば非戦闘職だったっけ?」
「情報屋はあくまで、情報を集めるのが仕事だぞ? 戦いなんて無縁、処理能力とかに職業補正が偏ってるんだよ」
家族は全員戦闘職部門なため、今回は観戦しているだろう。
しかし、隣に立つ男──タクマは、非戦闘職なため俺と共に走ることになる。
「しかしまあ、お前もキーシもずいぶんとだいたんなことをやってるよな。片や全部門の参加者、片や暴走ショートカット……お前らのせいで、普通に活躍していた奴らが目立てないだろうが」
「目立ちたくて目立つわけでも、そもそも目立とうとしているわけでもない。アイツはともかく、俺は普通にやっているぞ」
「……お前を観ようと思っても、誰も見つけられなかったという。だけど参加記録だけは残っているから、逆に参加していないのかとか話題になっているんだよ」
「さてな、何のことだかさっぱりだよ」
タクマとは普段からさまざまな話をしているので、その欠片を繋ぎ合わせて俺が光学迷彩を使っていたことぐらい、とっくに見抜いているはずだ。
それでも、俺は取り繕ってその情報をあえて隠す。
タクマはそれを理解し、自分なりに考えを見つけ出す……いつものやり取りである。
もし違っていたら、それはそれで新しい方法として採用されるだけだ。
他人の意見とは時として、自分には無い価値観を与えてくれるものだからな。
「とにかく、俺も無駄な詮索はしないが……ここで隠し通せるとは思わないよな?」
「分かってるさ。さすがに、熟練者を相手にそこまで舐めプはできないだろう」
「ああ、理解しているならいい。ともかく、お前も堂々と走ればいいのにな」
「……それは、無理だな」
なんせ原付きで『走って』いるんだ。
規格がまったく異なる以上、対等の勝負は本来できないんだぞ?
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