虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

簡易生産能力



 拓真との情報交換の時間。
 今回は“職業強化”を試そうとした結果、どうなったかについてである。

「──で、それからどうなったんだ?」

「普通にレベリングだぞ? それ以外にやることもないし、しいて言うなら……戦闘中でも生産ができるようになったな」

「……お前ってたしか、生産中は超絶チート野郎になるんじゃなかったっけ?」

「まあな。これで俺も、主人公っぽく戦えるぞ……ってなれば良かったんだけどな」

 俺だって少年の心は枯らしておらず、無双ロマンを抱いている。
 戦闘職と生産職の複合職にある、戦闘中の簡易生産ができる能力に俺は目を付けた。

 本来はキチンとした設備が無くとも、生産ができるようになる能力。
 それを強化すれば、:DIY:を起動させながら戦闘もできるのでは……と考えていた。

「強化させた結果、瞬時にアイテムが作れるようになった。最初は生産ができる結界を作るだけだったんだが、作成に掛かる時間が少しずつ減っていって……最後はそうなった」

「……まあ、ズルはできないってことだな。というか、たしか強化ってそれなりに経験値使うんじゃなかったか? もしかして、それ系の能力全部開放したんじゃ……」

「…………YES」

「マジか。ずいぶんとまあ、無駄遣いをしたみたいだな」

 一職ぐらい、俺の望む効果を発揮してくれると信じていたのに。
 残念ながら、職業の違いはあんまりなかったみたいだ……料理でも瞬きしたら完成だ。

「その能力そのものはどういうもので、強化すると他にどういう効果があるんだ?」

「ん? ああ、まずは質の向上だな。簡易な分、当然質が落ちるところを通常状態ぐらいまでは戻せる。他は……バフ効果が付く時、その成功率や性能が上がる」

「……やっぱ、チートだったなおい。特に後半、レアな付与が付きやすいってことなんだよな? しかも、それをいつでもどこでも作れるようになるとかふざけんな」

「まあ、そうかもな。:DIY:の効果で超強化されたアイテムを、即座に作り上げて使えるわけだし。ちなみに戦場で爆弾とか作って放り投げたらどうなるんだろうな?」

 実際、【見習い罠士】に就いて試したら、一気に大半の強化ができる程度の経験値も稼げたので、使おうと思って使えば、かなり有効的なのではないだろうか?

「……お前、独りで戦争とかできるよな?」

「俺を何だと思っている。まあ、蘇生薬も万能薬もあるし、死んでも即復活で死因がアイテムになるし……問題ないか?」

「……本当、方向性が違ったら世紀の大犯罪者になってたんじゃないか? アレのときみたいにさ」

 ずいぶんとまあ、懐かしいことを言ってくるものだ。
 ランダムプレイとは時にして、そんな極端なプレイを強要してくるのである。


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