虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
見習い成長 その10
「──“職業強化”か。ずいぶんとまあ、分かりやすい能力名だな」
《これより、職業ごとに得られる経験値に上限が無くなります。“職業強化”はその経験値を用い、さまざまな性能を高められます》
「オリジナルのカスタマイズができるってことか……うん、面白そうだな」
教えてもらった新たな【救星者】の能力。
合計レベルを10000まで上げなければ使えないのも、納得と思えるものだろう。
「具体的にどういう強化ができるんだ? たとえば、レベルを上げられるとか?」
《いいえ、上げられません》
「じゃあ……スキルが増えるとか?」
《いえ、それもございません》
使えない……いや、まだあるのか。
性能を強化と言っていたので、そういう部分まで対応していなかったのだろう。
「……じゃあ、どういう効果があるんだ?」
《旦那様がお喜びになるものであれば──職業能力を制限数から外し、常時発動可能にすることでしょうか》
「マジか。なんともまあ、コンプリートしないといけないな。ちなみに、それぞれどれくらいの経験値が必要なんだ?」
《最大レベル時の経験値、その百倍──》
あっ、うん、難しすぎだな。
これが仮に【勇者】の必要経験値だとしたら、年単位で時間が必要かもしれない。
種族経験値と違って、職業経験値は星から直接注入するという裏技が使えないのだ。
その百倍の経験値とやらを集めるのは、それ以外の職業でもゲキむずの難易度だな。
《あくまで常時発動のみが、そのような難易度の高い条件となっております。発動条件の緩和や能力そのものの性能強化であれば、より少ない経験値で行うことができます》
「……そういえば、条件付きで取得経験値を増やせる能力があったっけ?」
《はい。ですので、それらをセットしたうえでレベリングを行えば、通常よりは達成も容易くなるかと》
「じゃあ、できる範囲で試してみようか」
レベルダウンを許容するならば、試すことも可能だ。
見習いや生産系職業に多く存在した経験値ブースト系の能力、それらを強化していく。
「【救星者】そのものの能力は強化できないのか? セット数の増加とか、いろいろと試してみたいんだが……」
《申し訳ありません。“職業強化”はあくまで、“職業系統樹”の派生能力。【救星者】そのものへの強化はできません》
「まあ、『SEBAS』が悪いわけじゃないからな。とりあえず、戦闘職と生産職を一職ずつ全開放してみよう。それでどういう変化があるか試して、あとはまた考える」
《畏まりました》
見習い職ならば、すぐに上げられる。
さっそく試して、その結果からどうするか考えよう。
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