虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
見習い成長 その09
「チッ……お疲れ様」
「どうにか乗り切ったか……ふぅ、本当に疲れたぞ」
「それならそれらしく、汗の一つでも掻いてくれればそれっぽいのにな」
支援でレベルを上げられる職、そのすべてのレベリングが終了した。
さすがは人族最高峰の『騎士王』、適当な支援でもガンガンレベルを上げられる。
しかし、どうせなら国に送還したいと思っていたのだが……失敗したな。
全力を出させたいと少しずつ難易度を上げていたが、そちらもさっぱりである。
「して、いったいどれだけの職が今回の死闘で上がったのだ?」
「死闘って……まあ、死闘か。見習い系の職業だけだが、三十職ぐらいだな」
「……もう少し、報酬を上げてもらった方がよい気がしてきたな」
「そんなことを言うと思って、初めから準備してもらっている──店主!」
唯一の観戦者である串焼き屋の店主に、事前に焼いてもらっていた串を持ってきてもらう──肉は普段通りなのだが、特別なタレに漬けてもらったのだ。
「さっきまで報酬に出していたフルーツ、それで作ったスペシャルなタレだぞ? ほら、お上がりよ」
「で、ではさっそく!」
結構多めに用意してもらったので、この後は貪るように焼き串を食べる『騎士王』が視界に映るだけ。
あまりに暇なので、『SEBAS』と会話して時間を潰す。
「これでもまだ、見習い職は完全にカンストしていないのか」
《旦那様がお使いにはならないものがあります。また、少々年齢制限の掛かるような職業もございますので……》
「まあ、ルリなら何でも面白そうって言いそうだけどな。『SEBAS』、何かカンストさせていて変化はあったか?」
《はい。レベル合計が10000を超えたところで、新たな能力が発現しました》
一万……うん、異常すぎないか?
俺は能力値が低すぎるうえ、星の経験値を吸い上げられるからこそできた芸当だ。
支援職はその手段が取れずに、実際それなりの時間を費やす必要があったわけだし。
非戦闘職は戦闘職よりもレベルが挙げやすい場合もあるが……面倒臭いんだよな。
「戦闘職だけでレベルを10000まで上げるのと、非戦闘職だけで同じことをした場合なら、間違いなく前者の方が早いよな」
《戦闘職はただ戦うだけでよろしいので。その点、非戦闘職は職業に沿った行動が重視されます。旦那様は生産職のすべてが自動解放されていたため、職業経験値の割り振りが早期に済ませられたのが良かったのかと》
「解放されたのも、レベルを上げられたのも俺が:DIY:を持っているお陰だけどな。その能力とやら、あとで確認させてくれ」
《畏まりました》
そろそろ食べ終わるであろう『騎士王』を見ながら、こっそりと遠隔操作していた機械で連絡を送る。
……さて、逃げられるかな?
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