虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
見習い成長 その03
さっそく【見習い道士】に就き、レベリングを開始した。
いちおう戦闘方法もそれに合わせ、だいぶ前に手に入れた札を介してのものだ。
中には仙術が刻んであるので、【仙王】直伝の強烈な技が使い放題である。
魔法とは使い勝手が違うという話だが、俺はそもそも魔法が使えないんだよな。
「『SEBAS』、オススメの魔物を用意してくれ」
《畏まりました──出現させます》
さっそく迷宮が機能し、星から膨大な経験値を注がれた魔物が生成される。
それは『僵尸』と呼ばれる死体、額にお札が張られた魔物だ。
「札を剥がすだけでいいのか?」
《はい。ですが、剥がしたあとも一定時間は動きます。その間は狂乱状態にあるため、戦闘能力が飛躍的に向上しますのでお気を付けください》
「了解っと──『雲縄』」
もっとも初めに見た仙術を刻んだ札。
そこに仙丹のエネルギーを流し込むと、自動的に仙術が起動する。
札からモクモクと立ち込める煙状の雲は、俺が指定した物体──すなわち僵尸を包み込むようにして捕縛を行う。
仙術を使う利点は、仙丹のエネルギーが認識されづらいというところだ。
相手は仙人になれなかった死体なので、奴もまた感知できずに拘束された。
「あとは剥がして……狂化状態に」
『────ッ!』
「うわー、顔が怖い。ミイラだし、仕方ないと言えば仕方ないけど──重ねて『雲縄』」
なお、仙術を使った理由は他にもある。
札は俺の受けて学習した魔法なども記述してあるので、実際にはかなり多くの種類を有していた。
第一に仙人が就く職業の中には、【道士】としての経験が必要なものがあるから。
条件さえ満たせれば、職業に就けるのだから……そこには、仙術の使用も入っている。
第二に仙術の行使が【道士】系の職業において、それなりに経験値が入る行動だから。
もともと札を介して行う動きをすれば、職業経験値的なものがボーナスで入る。
中でも本来、使用の難しい仙術が込められた札を使えば、魔法や普通の符術用の術式よりも貰える経験値が多いのだ。
「あとは……火葬かな? ちょうどいい仙術があるし──『炎天渦』!」
『────ッ!?』
お札に仙丹を籠めて、僵尸に向けてスッと投げる。
投擲スキルが無くとも、『SEBAS』のサポートによってそれは正しく命中した。
そして、炎が渦巻き僵尸を焼き尽くす。
そこにいっさいの容赦は無く、渦が消えたとき──僵尸もまた世界から存在を失う。
「経験値、どうなった?」
《ボーナス補正もあり、【見習い道士】のレベリングは終了しました》
「早ッ!? 考えて戦うと、やっぱり貰える量が違うんだな」
……まあ、今回は仙術の札があったからこそできた裏技染みた高速レベリングだ。
だからこそ、次の職業からは……もう少しばかり、時間が掛かるんだろうな。
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