虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
見習い成長 その02
アイプスル
進魔の修練場 派生 生者の遊歩道
レベリングといえば、この場所。
家族用の記憶再生の『秘石』よりも、過去の膨大な戦闘データを基に生み出されたこの場所の方が俺には向いている。
「何より、家族全員の戦闘データが増加しているからな……経験値、入るんだよな?」
《実際に戦闘を行っており、その経験が器を錯覚させます。ドロップ機能を使っていない以上、リソースはすべて経験値として注がれます。これは、魔物を殺すよりも人を殺す方が経験値を貰える仕組みと同じですね》
「……さらっと言ったな。まあ、タクマもそういえば言ってたっけ? 休人は死に戻りするから魔物と似たようなものだけど、こっちの人は普通に死ぬから同じレベルなら魔物よりも経験値の量が多いって」
だからこそ、PK以外の殺人鬼がこの世界でも跋扈している。
魔法なんて力があろうとも……いや、あるからこそこちらでも行われているのか。
「そういえば、ショウが戦ったことがある殺人鬼が居たな……」
《『切斬剣人ソード・ザ・リッパー』です。彼はその所業から半分魔に堕ちる……つまり魔人化しかけており、完全に至っていた場合はユニークモンスターに選定されていたほどの狂人だったようです》
「よくそこまで分かるな……魔人化って、殺人でなるものなのか?」
《いいえ。それは条件の一つ、魂魄の淀みを満たすものでしかありません。一つの想念に狂う、システムに見初められる、特出するナニカを有する……そして、とある概念を獲得することで魔人と化します》
なんとなくだが、前にユニークモンスターについて聞いた時と似たような反応だ。
特に最後、言ってはいけないとかそういう感じなのかもしれないな。
「まあ、別にいいさ。ちなみに俺って、その魔人化はできるのか?」
《可能です。しかし、オススメしません》
「できるんだ……えっと、なんでだ?」
《魔人の特徴は、膨大な能力値を対価とした多様なデメリット……ですが、旦那様にはその恩恵は絶無です》
あー、うん、まったく意味が無くなる。
もっと倫理的なことを言われるかもと思っていたが、こういうシンプルな理由なら俺もすぐに諦めがつく。
「じゃあ、それはいいか。そろそろ始めたいし──オススメは?」
《【見習い道士】。旦那様の世界における、中華系の職業です。札に刻んだ術式を発動することで、戦闘時の消費魔力を抑えて長期的かつ多様な戦闘を行えます》
「道士か……仙人っぽいのも、もしかしてその理由か?」
《はい。繋がりがあり、すでに擬似的な仙術が行使可能ですので》
なるほど、それならやってみたいと思う。
前から仙丹を使わないのに、力だけ使うことに割と罪悪感があったし。
……よし、じゃあ最初はこれからだな。
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