虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

贋作 前篇



「いっそのこと、職業の能力でスキルを複製できないか?」

《可能です》

「だよな、やっぱり無理……え゛っ!? あるのかよ!」

《大幅な劣化を代償に、他者の使用したスキルを模倣する。そういった能力を有した職業が存在しております……ただし、旦那様が就くことは現在不可能です》

 そこまで言われれば、どういう意味なのかは俺でも察せられる。
 あるけど就けない、それはつまり何かしらの制限があるものということで──

「人数制限付きの……王とか神とかが付いているヤツなのか。ちなみに、その系統は?」

《【贋作者】。初期はアイテムのみですが、王の領域に至ることで、他者の能力をも複製できるようになります》

「いかにもやってそうな職業名だしな……これには【見習い】があるのか?」

《いいえ。そして、【贋作者】は作ることを本質としていないため、旦那様の初期状態の“職業系統樹”にも表示されませんでした》

 俺もそれに就けたのならば、能力とか関係なく就こうと思っただろうし。
 まあ、初期から就けた職業は全部、すでに上級までカンストしているわけだが。

「……【見習い】が無いってなると、これも難しいのか。たまに複合系の職業が増えていたけど、【贋作者】は無いもんな」

《いえ、旦那様でしたら比較的簡単に就職条件を満たせることでしょう。ただし、いくつか問題点がございまして……》

「問題点?」

 説明されたその条件とやらは、たしかにややこしくなりそうなものだった。
 しかし、【贋作者】ならば当然とも呼べる内容でもある。

「それ、どんな方法でもいいのか?」

《下位職はたしかに、それでも構いません。ですが上位職、そして【王】に就くのであれば確実に必要となります》

「……とりあえず下位の分だけ試してみて、あんまり問題が無くなったら続けてみるか」

《畏まりました。旦那様のご指示通りに》

 やることが決まったので、行動開始だ。
 とりあえず……街に行ってみようかな?

  ◆   □   ◆   □   ◆

 大通りの一区画を使って築かれたそこは、休人たちが露店を開いているスポットだ。
 お金の無い初心者、そして初心者をカモる商人や生産者たちが集まっていた。

 ここにある商品は、曰く付きだったり知られていない製作者の品だったりする。
 だがその分安く、何より後腐れなく使うことができるのだ。

「……とりあえず、これぐらいでいいか?」

《はい。十種類の確保ができました》

「あんまり気が進まないというか、尋常ではない罪悪感があるよな」

 現実でも、たしかにそういうことをする奴はいるだろう。
 すでに他者が成功しているからこそ、自分でも同じだけの利益があると考え実行する。

 それで、どれだけの被害が出たのだろう。
 ……そう考えてしまう前に、やることを済ませなければ。


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