虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
スキル探し 前篇
冒険世界 始まりの街
古代の箱庭で管理者っぽいことをしたり、精霊獣に星の力を授けたりと……なかなかに特殊なことばかりやっている俺。
だが、身内以外それを知る休人は誰も居らず、相も変わらず俺は弱者でしかない。
道を行けば死に、休んでいれば死に、何もしなくても死に……虚弱すぎる。
歩く様子を語る描写に、『肩で風を切る』というものがあるが……結界も使わないでそれをやっただけで、俺は死ぬことだろう。
「死んで死んで死に続けて……『死天』でアイテムが貰えるのと、デスペナがいっさいない利点が無かったら絶望するよな」
俺たち休人は死んでも蘇る。
だがそれは、何の対価も必要とせずに行われることではない。
ランダムか条件を満たすと指定できるらしいが、一定時間能力値が一桁で固定される、経験値がもらえなくなる、特定のエリアから出られなくなるなどの制約が課せられる。
……とまあさっき仮定形で言った通り、俺は一度も経験したことがないんだが。
強力なスキルを初期で得た対価に、こんな虚弱スペックとなった俺。
種族スキルは有しておらず、職業スキルもそもそも初期ではバグっていた。
通常のスキルは獲得できないし……うん、散々なステータス画面だったな。
そんな異常すぎるステータスが、唯一俺に与えてくれた恩恵が──ペナルティの完全ゼロ化であった。
死んだ者のすべてのスキルレベルの合計が100以上になったとき、初めて休人はデスペナを体験することになる。
だが、俺のスキルレベルの合計は10。
自分のステータスを虚弱化させたスキルのレベルである10までしか、上がらないという状態になっていた。
「──なんて、状況を今さら振り返ってみたけど。スキルの習得は難しいのか?」
《はい。旦那様という器を、:DIY:スキルがすべて占領しております。職業スキルは外付けの器を用いておりますので問題ないですが、通常のスキルと種族スキルはそのため不可能となっております》
俺の鼓膜に響く、ダンディな声。
それは俺が例のスキル──:DIY:の力を使って構築したスーパーAI『SEBAS』によるものだ。
「……こう、器が拡張されればなんとかなるみたいな話を聞いたことがあるんだが?」
《旦那様はレベルを上げることで、漏れていた器の中身を収めていきました。レベルを最大値まで、それこそ限界突破したうえで到達した999になったところで、:DIY:は完全に旦那様に適合しました》
「世知辛いな。というか、あんなチート能力なのに使いこなせていなかったのかよ」
《とはいえ、それはスキルの性能にあまり影響のないことですので。旦那様が使うことには、ズレが無かったと思われます》
なんて話をしつつ、目的地を目指す。
困ったときの知恵袋、万能にして全能な王様に質問することにしよう。
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