虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

星霊獣 前篇



 ──現在、俺は正座をしている。
 そしてそれを行わせているのは、ピスピスと鼻息を荒くするウサギであった。

『お前は……お前というヤツは!』

「あははっ、何のことだ?」

『少し目を離している間に、いったい何をしたかと聞いているんだ! 世界樹が、何もしないであんなに輝くとでも!?』

「……まあ、よくあることだろう?」

 そんなはずないだろう! とブチぎれる風兎を宥めながら、俺も世界樹の方を見る。
 祭壇にして神棚である『神壇』、そこは世界樹の中にあるからな。

 もともと世界樹は微弱に発光しており、夜でも世界を照らしている。
 だが、現在その光量がいつにも増して増えている……道管の辺りかな?

 根元から葉に至るまで、今まででもっとも輝いている。
 夜を昼にする、それが可能なほど……導入している光発電機も効率よく回っているな。

『そんなはずあるかぁああ!』

「おいおい、落ち着けって。自分の周りで暴風が吹いているのも気づかないのか? それだと、世界樹に悪影響が──」

『そ、それは不味い! ふんぬぅう!』

 言葉だけは怖い、しかしなぜか愛らしく思える『ふんぬぅう』によって、周囲に吹き荒れていた嵐は沈静化していく。

 それでもまだ、微風が吹いている風兎を収めるべく、イピリアも交えて事情の説明を行うことに。

「──かくかく」

『しかじか……とでも言ったら、お前の体が天高く飛ぶと思え』

「守護獣として精霊獣を呼ぼうと思ったんだが、なぜか星の方の星霊獣にできることが分かったんだ。だから……ちょっと、いろいろと試してみました」

『『…………』』

 俺も精霊獣で、始めはイイと思っていたんだ……けど、あまりにメリットが多すぎて、ついやっちゃったんだよ!

 反省はしている、でも後悔はしていない。
 なぜならこれから生まれる星霊獣は、必ずやこの星『アイプスル』をよりよくしてくれると確信しているのだから!

「そうだ、せっかくだからイピリアも星霊獣になってみないか? ちょうど、それっぽい術式を見つけてあったんだよ」

『……そんな簡単に言っていいのか?』

「問題ない。懸念しているかもしれないから言っておくが、別にこの世界に縛り付けることなんてない。あっちの世界を守り、お前の目的を果たすこともしっかりとできるぞ。何より──強くなれる!」

『! それは……とても魅力的だ』

 かつてイピリアは『超越者』に敗北した。
 その『超越者』が保証する、間違いなくイピリアは強くなれるのだ。

 ──風兎はジト目を向けてくるが、きっと結果を見れば分かってくれるだろう。


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