虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
精霊獣 中篇
その問いに対して、『SEBAS』は答えてくれる。
《個体:イピリアは精霊獣です。故にこの世界で生きることを定められております。なぜならば精霊は星の生み出したシステム。勝手に外部へ向かうことは許されておりません》
「そうか……で、どうすればいい?」
《契約を。精霊自らで向かうことは許されずとも、星より脱することを許された者と共に出るのであれば可能となります》
「なるほど……了解した」
イピリアの答えを俺は聞いた。
彼が世界をよりよくしたいと言うのであれば、俺はそれを手伝うと誓っている。
だが、イベント世界だけでは彼の望みを叶えることができない。
なので『SEBAS』に、どうすればいいか……それが先ほどの説明である。
「改めて、口調も変えて語らおう。その答えならば、俺も相応の……本来の態度で応えるべきだと感じたからだ」
『構わない。精霊はその言葉に籠められた感情を読み取れる。そこに悪意が無いのであれば、どのような言葉であろうと受け入れる』
「そうか、なら助かる。まず始めに、俺の世界に来てもらいたい。そこで、守護獣とはどういうものなのか知ってほしいんだ。そのために契約を──【救星者】たる俺と」
『……また新たな名か。いずれにせよ、恩人であることに変わりはない。その契約を、受けさせてもらおう』
同意を得たということで、最近『代表』にやった儀式っぽいことをもう一度行う。
これで精霊獣であるイピリアも、世界を股にかけることができる。
「──そういえばふと思ったんだが、風兎の場合はどうなんだ?」
《クローチルの場合、交渉が仮契約という形になっていました。ただ渡航権を与えるだけのものですので、システム的に何かが必要となるわけでもありません》
「そういうものかねぇ。というか、レムリアの件から考えると必要だと思うが」
《仮契約ですので。互いに納得がいかなければ破棄され、移動は不可能となります。それは帰還も……一方通行な旅を、旅行と言わないことと同意でございます》
俺にも分かりやすく説明してくれた。
なるほど、それはただの拉致監禁だ……囚われたにしては、だいぶ活動できる範囲の広い収容ではあるが。
風兎は俺との契約を果たし、そのままアイプスルに移住することを選んだ。
森を統べる守護獣たる風兎は、森の住民を守るために決断してくれたんだよな。
今回、イピリアがそういった選択をした風兎と接触することになる。
その結果、どのような考え方を得るのかがとても楽しみだ。
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