虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

精霊獣 前篇



 イベント世界 封印の祠

 言われるがまま、『SEBAS』に案内された辿り場所を俺は知っていた。
 かつて、この世界を初めて訪れた際にここで出会いを経験している。

「ここに来たってことは、目的は一つのはずだが……なんでだ?」

《彼の答えを聞きましょう。長い間、それこそ旦那様が忘れるほど待ちました。精霊の感じる時は人族よりも長く、このときこそがまさに尋ねるに相応しい》

「お前がそういうのなら、きっとそうなんだろうな……『イピリア』、いったいどんな答えを見つけたんだろうな?」

 その名こそ、祠の先に祭られているであろう精霊獣のもの。
 ……まあ、祠など存在せず、ただ封印の術式があっただけなんだけどな。

  ◆   □   ◆   □   ◆

 かつてここを潜った時、俺を迎え入れたのは死を届ける瘴気だった。
 あれから地獄の瘴気などを経験し、税調したなぁと勝手に思う。

 だが現在、祠の中にそういった空気の淀みは存在しない。
 むしろその逆、入った者に安らぎを与えるような──原初の息吹が漏れ出てきている。

「久しぶりですね──イピリア」

『……お前は』

「ええ、とても久しぶりです。私のことは覚えておいででしょうか?」

『ツクル、『超越者』にして『生者』の名を冠する者……だったな? 時折訪れる者たちが、話をしていた。それに、我もまた忘れることはない』

 虹色のヤモリ、そう呼ばれるであろう精霊獣こそがこの祠に封印されたもの。
 そして、邪に囚われていたその身を、清浄なものへ変えた経験を持つものだ。

 俺はかつて、邪に狂い殺しにかかってきた彼と相対した。
 まあ……それからいろいろとあって、その邪を払って自由の身にしている。

 そのうえで、最後に言った。
 自分が今後の人生において、何をしようとするのかを。

「──答えを訊きに来ましたよ。かつてのイピリアを継ぐのか、それとも民を守るのか。はたまた……それ以外の選択肢を見出したのか。どんなものであれ、私はその決意を評して応援することにしましょう」

『……我の下に、人族が訪れた。彼らはお前と出会い、世界が変わったと告げた』

「そのようなことを。私はただ、彼らがよりよい生活をできるお手伝いをしただけです」

『諍いは無くなり、魔物たちは住む場所を選び、平和が訪れたと。同盟が結ばれ、豊穣となり、笑顔が溢れたと……それらはすべて、一人の男によってなされたと。我はそれを聞いて、考えを定めた』

 虹色のヤモリは結構渋い声を一度溜めて、俺に言い放った。

『──我に教えてほしい。世界をよりよくするために、人を守るためにすべきことを』


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