虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
古代会談 その08
「──世界の真実は以上です。皆さんがたとえ外に出ても、そこに広がるのは環境そのものが、皆さんを受け入れるようにできていないのですから」
「……なるほどな。タビビトがそのような格好なのも、我らが知りようもなかった技術を持っていたのもそのためか」
「その通りですね。また、この世界が知りようのない言葉を知り、存在しているのもまたそれが理由です。ポーションを知り、使うことができるのも皆さんのご先祖様にはその知識があったからですので」
とりあえず、説明をし終える。
とはいっても、地球のことは伝えないためそこまで難しくはならない。
あくまでも別世界が存在し、この世界はそちら側にとってはるか太古だということを伝えるだけで済む……『SEBAS』調べによると、恐竜も過去には居たらしいので。
なお、魔物たちは生まれもって基本的な知識をある程度宿している。
野生の勘でもあるのだが……魂魄に刻まれた記憶、とでも言った方が正しいか。
そういうわけで、魔物は生まれた状態からある程度戦うことができたり、生き残るためにどうすればいいのかなどを理解している。
「いずれこの世界に、外界より人々が訪れるでしょう。多様な種族が──先ほど見せたような姿の者たちがですね──来ることで、確実にバランスが崩れます。私一人が来ただけで、このようになったのですから」
『北の山岳地帯は人族のモノとなった。では同じように、それらも北へ送ればいい』
「残念ながら、彼らは強くなることに貪欲なのです。そして、あの世界には存在しない皆さんから得られる素材は、財と等しい価値を持ちます……それらが何を意味するのか、ご理解いただけますか?」
『『『『『『『『…………』』』』』』』』
古代人と他の魔物たちが居る現状でも、弱肉強食の争いが繰り広げられている。
そこに外部から侵入者が現れ、供給もせずに需要だけを奪っていく。
そうなれば生まれるのは、さらなる闘争。
失われたものを補うため、他の者たちを傷つけてでも得ようとするだろう。
「さぁ、この現状をどうするのか。この問題こそが、皆さんを集めた本当の理由です。外からの脅威に対し、どのような結論を生むのか……どうか私に教えてください。必要であれば、私が動いても構いませんよ?」
ちなみに、『SEBAS』はどうすればいいかとっくにその方法を見つけている。
しかしそれでは、彼らの自主性が育たないということで……この企画を始めた。
自分たちで考え、それを実行することで生まれる協調性もあるだろう。
この世界は、『アイプスル』とは異なる在り方になってもらいたいからな。
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