虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

古代会談 その04



 魔物たち、そして古代人が世界の覇権を賭けて戦っている。
 俺とヘノプスは……それを見世物扱いし、観戦していた。

「というわけで、始まりましたバトルロイヤル。実況担当の私、ツクルと申します。解説担当は──」

『ヘノプスです。あの、マスター。これはどういった意図があってのことでしょうか?』

「暇潰しです。この声は彼らにも伝わっておりますので、戦闘における有利・不利を覆すギミックの一つとお考えください」

『畏まりました』

 あとは単純に、家族が観るためのものだ。
 お父さんの趣味が悪いと言われたら心が折れるのだが、幸い子供たちは恐竜に目を輝かせてくれる。

 虫も混ざっているが、『原初魔虫オリジンインセクト』はカッコイイ部分もあるので……アレの要素もないし、そのまま見せる予定だ。

「ヘノプスさん、今回の注目すべき選手は誰でしょうか?」

『……北西区の代表でしょうか。その身が鉱石で固められている以上、攻撃と防御を同時に行えます。守護獣であり防御特化である儂には劣るモノの、かなりの頑健さがあると思われます』

「なるほど、参考になりますね。このように対戦相手の情報も開示されますので、恨みっこ無しですよ? 嫌だと言うのであれば、耳に入れなければ公平となります。それでも、周りの皆さんは聞いているでしょうけど」

『マスター、それは言ってやらない方が良いと思われますが……』

 試合開始直後、東区のティラノサウルスと西区のサウロポセイドンが暴れ始めた。
 他の奴らはまず様子見、二人の戦闘に巻き込まれないように距離を取る。

 だが、だんだんと範囲攻撃が多くなった結果、強制的に巻き込まれる。
 身のこなしでどうにか古代人である代表だけが、未だに機を窺っていた。

「南西区の代表に触れることで、敏捷性を上げた北区の代表ですが、先ほどの動きから察するにまだ使いこなせていませんね」

『人の身で、即座に使いこなせることの方がおかしいのです。彼らは時間を費やすことであらゆることを可能としますが、与えられたモノに関しては相当な時間を要します』

「そうですね。本来であれば、共闘して事前に倒しておいた方がいいかもしれませんね。彼らはその大きさで、圧倒的強者である魔物たちを屠ってきました。なのに、同等の力を得ようとしているのですから」

 虫が人と同じ大きさになったとき、人よりも優れた身体能力を持つという話は有名だ。
 実際に、原初魔虫も恐竜型の魔物たちに引けを取らない戦いを繰り広げている。

「しかし、皆さんはそれぞれ異なる強さがございます。おそらく、とあることを気にしているのかもしれません──私がすべてを治します。それを信じていただければ、もう少し戦いを有利に進められるかもしれませんね」

 集められたのは知性を得た魔物たち。
 決して知性を持たない個体ではできない、力の使い方ができる。

 それこそが『開核』──己の力の根源を、命の炎を燃やす強化方法だ。


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