虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

古代会談 その02



「──みなさん、集まっていただき誠に感謝申し上げます。ご存じかと思いますが、改めて。私はツクル、こことは違う世界より来ました【救星者】です」

 知恵ある魔物、古代人、そして守護獣が空間を魔道具によって改変された火山の中に集まったところで、俺は挨拶を行う。

 全員と面識を持っているのは俺で、公平な判断をすると証明するためでもある。

「分かりやすく言うのであれば……この世界の新しい管理者です。力の一端がこの通り、火山にて証明いたしましょう」

 指を鳴らすと彼らの足元で蠢くマグマに変化が生じ、熱を隔絶した結界に衝突する。
 その速度と緻密な操作能力から、少なくとも逆らい難い相手だと理解してくれた。

「少し前、千を超える魔物が突如出現して暴れ回ったことを覚えておいででしょうか? あれの影響で、この世界のパワーバランスに変化が生じました。人族は完全に北を占有したように、区画の主が変わったようですし」

 神練はあくまで俺に向けられたもの。
 なのでそこまで多くの魔物は向かわなかったようだが、それでもゼロではない。

 それらを糧として、強化または進化をした魔物たちがいる。
 下克上をやったり、地位を高めたり、知性が芽生えたり……などだ。

「さて、本来であればこれから、皆さまの主義主張を基に世界に絶対順守の掟を一つほど設けようとしていたのですが……気が変わりました。それではおそらく、納得しない者が必ず生まれるはずです」

「どういうことだ、タビビト!」

「……簡単な話です。誰もが納得する、とても単純な方法──殺し合い、残った者に真の長としてルールを決めてもらいましょう」

『ハッハハハハ! 面白ぇ、それならたしかに納得できるわなぁ!』

 俺の言葉に反応したのは、戦闘狂疑惑が出ている東区画のティラノサウルス。
 鋭い牙や爪がギラギラと鈍く光るのは、意欲に呼応して魔力が籠もり始めたからだ。

「勝てばすべてを得られます。また、死んでも私が生き返らせましょう。これは信じてもらえるか分かりませんので、参加したくないのであればそれでも構いませんよ?」

[蘇生が 本当に できるのか?]

「条件付きで。ある程度肉体が保存されており、死後からあまり経っていない状態であれば、というものです。ああ、あとあらゆる病や状態異常を治すこともできますよ」

『……本当か?』

 おっと、これに反応をしたのは北東区画のヴェロキラプトル。
 まあ、彼らの区画は多様な魔物が居るので何かしらの問題があるのだろう。

「ええ、参加者に一本ずつ進呈しましょう。戦闘後には一度使用しますので、それで効果のほどが分かるはずです。……あっ、北西には少し別のものになりますが」

[分かった だが]

「それはまた、別ですのでご安心を。困ったことになるのは、皆さまだけとは限りませんし。では──参加していただけますね?」

 彼(?)は自分の守る者たちに使える分が欲しいだろうし、蘇生薬と彼用のアイテムは別でプレゼントする予定だ。

 それ以外に誰からも異論はなく、この世界の長を決める戦いが始まることになった。
 ……うん、これで戦闘データを集めることができるよ。


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