虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
古代会談 その01
中央区画 火山内部
「うーん、どうにか間に合ったか」
「これは……凄まじいな」
「どうでしょうか? 皆さまと顔を合わせておりますので、環境もそれぞれに最適な状態に調整してありますが」
「……我らの魔法では、こういったことをやるのはまだまだ難しい。タビビトの魔道具、なんとしても物にしなければ」
やめてください、商売上がったりです。
その本音を隠すように、とりあえず笑みだけ浮かべて誤魔化しておく。
古代人の学習能力は尋常ではないので、あまり教えすぎないことにしたのだ。
酒の席で軽く言ったことすら実現していたので、教え過ぎ厳禁である。
なお、何が凄いのかというと、火山内部を九等分して、それぞれの場所で水を用意したり温度や湿度を変えるなど、面倒なことを一つの魔道具でやっているからだ。
それはすべて、『SEBAS』が操作してこその魔道具なんだけど。
コントロールを魔道具自体ができない代わりに、効果をデカくしたからである。
「夜明けはもう間もなく、気が早い方はそろそろ到着するでしょう」
「……来てくれるだろうか」
「ええ、問題ありませんよ。また、たとえこの場で争おうにもできないようにしてあります。その機能を使わないよう、願っておきたいですね」
ちなみに、火山の大きさ的に収まらない恐竜タイプの魔物もいるが、こちらは火山をどうにかすることで解決した。
上を見れば青い空がはるか高い場所に存在し、空間が拡張されていることが分かる。
マグマの中に落ちないよう、足場などの確保もバッチリだ。
そんな風にこれからの予定を確認していると、ノシノシと足音が聞こえてくる。
ハッとする代表を落ち着かせ、内部へ繋がる入り口を見ていると──
「一番乗りですね、よく来てくれました」
[ああ 時間には 早かったか?]
「いえ、問題ありませんよ。代表、彼が北西の区画を統べるお方です」
さまざまな鉱石で体を構成する、ティラノサウルスを模したゴーレム。
彼は首から下げた魔道具を介し、俺たちと会話を行っている。
「あ、ああ……北の代表だ。よろしく」
[よろしく頼む 北の 北西だ]
なお、今回彼らは自分たちが守護する区画で呼び合うことになっている。
ネームドは一体もいないので、どう呼べばいいか悩んだからな。
代表も代表で、それは代々引き継いできた名前だし……今回は北で我慢してもらう。
「おや、他の方も少し早く来ましたか。これでは会談の時間も、少しばかり早めざるを得ませんね」
「北西の……まさかだが」
[おそらく 北の 考えている 通りだ]
「……恐ろしいな、タビビトは」
みんな会談を早く済ませたいのだろう。
よしよし、それならできる内にちゃっちゃと纏めようか。
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