虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
古代交渉 その14
「どうだ、そろそろ終わるか?」
《通常個体の殲滅は完了しました。しかし、上位個体は非常に生命力が高く、即死耐性を獲得して無効化しております》
「マジか……なんでそんなに強いんだか」
《原因はこの緊急時に対し、王を生み出したことかと。どうやら共食いを行うことで、可及的速やかに進化を行ったようです》
魔物に誕生する王種とは、配下に何らかの力を授けるモノが多い。
当たっただけで即死する弾丸から生き延びるため、それに対応した進化をしたようだ。
《能力は共有。自身の配下となった同種に、すべての能力をリンクさせる……それが王の権能のようです》
「つまり、さっき言ってくれた即死耐性を獲得した個体がどこかにいて、そいつが死なない限りは弾丸は無効化されるのか?」
《いえ、すでにすべての個体が即死耐性を会得しているかと。攻撃を受けても生き残る、それが耐性を得る条件ですので》
「厄介な……雑魚には効くんだな? なら、三分の一はそのまま撃っておいて、残った三分の一ずつ俺たちで使うぞ。片方の操作は任せておくぞ」
視覚サポートを受け、俺は奴らをモザイクの塊としか認識していない。
デフォルメをしていないのは、大小の感覚が狂うと戦闘に支障が出るからだ。
そう、戦闘を直接やる気でいる。
やはり現代人らしく道具任せにするのも良かったが、古き良き虫退治(物理)で終わらせるのもいいだろう。
「直接潰せばいい話だろ。『SEBAS』、『メカドラ』をくれ。銃で」
《畏まりました。転送開始──次元歪曲、空間超越。『機星龍』──転送完了》
「力を借りるぞ」
『グルゥ!』
拳銃を握りしめ、ドローンで作られた空へ至る道を駆け抜ける。
現実なら御免被るが、結界を纏っているのでヤツらに襲われる心配はない。
「精神的な問題も今は解決しているし……汚物は消毒じゃぁあああ!」
『グロォオオオオッ!』
小さな銃口から放たれるのは、物理法則を超越した光の柱。
龍の息吹を模した一撃は、即死無効を使うヤツらを灰燼へ帰す。
魔石をその都度補充しておけば、即座に魔力が溜め込まれて発射可能になる。
火の耐性や魔力そのものへの耐性があるだろう……が、超火力で一気に押し潰す。
「残ったのは王の個体だけか……ああ、音は届けないでくれよ。メカドラ、弾丸を入れるからぶっ放せ」
『ギャオッ!』
「装填──『喰獣の牙』。魔力120%補充完了──『極龍砲光』発射!」
『グギャゥーーーーッ!!』
トドメの一撃は『死天』のアイテムを触媒に、尋常ではない威力を可能とした一撃。
極太レーザーとかではなく、大砲サイズの弾が飛んでいく。
限界まで魔力を圧縮したそれは、少しずつ『喰獣の牙』を模した形となる。
そして、ヤツらの親玉が逃亡するのを自動追尾で捉え──牙を突き立てた。
「死ね、永遠に」
ナニカに喰われた親玉は、存在を欠片も残せずにこの地から消え去る。
……これでようやく、交渉に移れるな。
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