虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

古代交渉 その13



 嗚呼、アア、ああぁあああああああッ!!
 なぜ、ナゼ、何故貴様が現れるのだ!?

 黒き使者は群れをなし、俺の下に君臨。
 巨大化した影響か、ギチギチと不快感を引き起こす異音を鳴らしている。

 精神的なダメージからか、それだけで俺は死んでしまう。
 ……コイツが原因で作られたアイテムは、どうしてもでないと使いたくないな。

「……先に確認しておこう。あれ、殺っても許されるだろうか?」

《ご説明を省きますが、あれはプロトファスマと呼ばれる始まりのGです。肉食であり、この世界においては唯一『原初魔虫オリジンインセクト』の支配下に収まらない存在です》

「……こっちでも、やっぱり凄いんだな。敵ながらあっぱれって、こういうときに使う言葉だとやっと分かった」

 しかしながら、ヤツは許されざる敵。
 とりあえずボスである『原初魔虫』にはペコリとお辞儀だけしておいて、俺はヤツの下へ向かう。

「──『SEBAS』!」

《仰せの通りに。ドローンを展開、これより殲滅を開始いたします》

「支配下じゃないなら、全部殺してしまっても構わないのだろう? 殺虫剤は他にも影響があるかもしれないし、普通に再生不可の銃弾で潰せ!」

《装填──『死導の絶弾』。散弾モードに変更し、射撃を実行します》

 空から放たれる禍々しい漆黒の弾丸。
 それらは宙で破裂し、小さな礫をヤツらへとぶつけていく。

 ──命中した個体には、二つの内どちらかの変化が起きる。

 一つ、そのまま地面に墜落。
 二つ、時間が経ってから地面に墜落。

 死へと導く絶対なる弾丸。
 クリティカルヒットしたなら即死、そうでなくとも部位ごとに秒読みで即死が発動するカウントダウンが起きるという代物だ。

「ふははははっ! 圧倒的ではないか、我が軍は! ……おや、来ましたか」

『………………』

「何者か、ですか。見ての通り、私は人族です。しかし、ただの人族ではなくこの世界を統べし者。この力が、只者ではないことの証明になるでしょうか?」

『………………』

 何やら羽音を鳴らしているのだが、それを『SEBAS』が翻訳してくれている。
 ゴーレムの時といい、そもそもどのようにして解明しているんだか。

 俺の方に寄って来た『原初魔虫』に話しかけると、どうやら俺の力を暫定的にではあるが認めてくれたようだ。

「ありがとうございます。確認しておきますが、アレはすべて殺しても構いませんね?」

『…………』

「ええ、もちろん。たとえ許されずとも、私は彼らを滅ぼします。彼らの子孫は、私たち家族の生活に影響を及ぼしましたので」

 先に力を示したからか、交渉もだいぶ簡単に進んでいる。
 ……さて、だいぶ数も減ってきているし、そろそろ絶滅させられるな。


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