虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
古代交渉 その08
洞窟は進むにつれて、膨大な量の魔力を感じられる場所だった。
それはその地を住処にするボスの力ではなく、この地形そのものが宿したもの。
「一面がレア鉱石の塊か……うん、それが強くなった理由なのかもな」
《大半が『真銀』であり、それらを食すことで成長していたのでしょう。旦那様の推測に加え、それ以外の金属も糧となっていることでしょう》
「メタルイーターとか、そういう感じのヤツが出てくる物語を見たことあるな。いずれ、古代人たちも金属を必要とするような時期が生まれるはずだし……説得は必須だな」
自ら発光する鉱石などもあり、この洞窟内はかなり明るい。
そのため、魔物の姿も死亡レーダーを使わずとも視認できている。
金属系の魔物も出現するのだが、こちらは存在を隠すことで逃げ延びていた。
魂を切るモルメスも、もともと命の無い無機物な魔物には通用しない。
それがもっとも気づかれることなく倒す手段なので、使えないのは非常に困る。
倒すだけなら『死天』シリーズのアイテムで充分だが、いかんせん派手なのだ。
「というわけで、そのままやってきました。戦闘行為をしていないことを加味して話を聞いていただきたい」
『…………』
「私は人族の使い。すべての生物が共存するため、交渉の場を設けたいのです。協力してはいただけないでしょうか?」
『…………』
ティラノサウルスと似たシルエットをしたそれは、全身が金属で形成された魔物。
これまで見てきた洞窟内の魔物と異なり、その瞳には知性が宿っている。
──うん、言葉が伝わるかは別だけどな。
『…………』
《明滅が言語となっているようです。こちらで解析しますので、旦那様には反応をいくつか引き出していただきます》
「了解。すみません、肯定と否定、そして判定不可能の三つを教えてください」
『…………。…………。…………』
俺にはまったく理解不能なのだが、そこは『SEBAS』スペック。
どうやら順に行われた反応だけで、理解しているようだ。
《プログラム入力──完了。旦那様の視覚にどの反応を行ったのかを表示します》
「すみませんが、今度は三つをランダムでお願いします……肯定、判定不可能、否定の順で合っているでしょうか?」
『…………』
「肯定。はい、理解しました。これで交渉を進めることができます。詳細な言語も随時理解していきますので、先ほどの三パターンのどれかを示していただいたのち、提示していただけると助かります」
再び肯定の信号が送られてきたので、そのうえで話を進める。
……『SEBAS』の仕事が早く、一言二言で普通に話せるようになったよ。
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