虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
文明規制
「我らが友、客人タビビトよ。よくぞ再び来てくれたな」
「ええ、招かれるのであればいつでも参りましょう」
三重の呼称で分かりづらいが、この地において俺は友の扱いをされている、旅人である客人ということになっている。
迎えてくれたのはこの箱庭の中を生き抜く人族の長、『代表』の名を冠する男だ。
ちなみに慣習からか、文明が繁栄しても未だに相棒ならぬ相槍がすぐ近くにある。
「あれからさらに技術は向上している。二度と飢えることもないだろう」
「それはよかったです……しかし、忘れてはいけませんよ。技術の発展だけがすべてではなく、しっかりとした下地を基盤に浸透させていくことも大切なのだと」
「便利だからとアレコレやっていては、いずれ争いが生まれる……そうだったな?」
「ええ。私たちの世界では、利便性はやがて武器へと用いられ……最後には決して消えない傷を世界に刻む、破壊兵器を人の手で生み出してしまいました。それらの失敗を、こちらでも起こしたくはありません」
この世界だと、地球以上に危険なものが無数に存在する。
それに対抗するためだとしても、身の丈に合わない兵器の用意は不要だろう。
そのため、かつて彼ら古代人に渡した情報の中に兵器の類はいっさい入れていない。
なぜなら、彼らにはレベルとステータスという概念が備わっているからだ。
世界はその二つさえ高ければ、何かしらの優位性を得られるようになっている。
スキル、職業、祝福、さまざまな恩恵が兵器の価値を貶めていく。
たとえ核兵器をこの世界に導入したとしても、無効化する術がある。
それはすでに、『SEBAS』が証明してくれていた。
「くれぐれも、お忘れすることないように。もう少しと欲する思いが、のちの未来に影響するのだと。周りがそれを正しく理解していないと、いずれ諍いの種になるのだと」
「分かっている。現に、我らが住処を守るために守護獣を仲介し、この世界の住民たちに話し合いの場を設けてもらおうとしている」
「ほぉ、そのようなことに」
「言葉は交わせずとも、意思は伝えられる。守護獣越しにそれを行うことで、知性を宿す奴らとの和平を望むつもりだ」
いつの間にか凄いことになっていた。
森獣などの聖獣だって、特定の場所との平和的な交渉を進められるわけだしな。
なるほど、それは不可能ではない。
しかしながら……この世界って、基本的に肉食の奴が多いからなー。
果たして上手くいくのだろうか?
うん、少しばかり気になってきたぞ。
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