虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

機械販売交渉 後篇



 そして、世に出回った成長する機械。
 その名は『プログレス』、体のどこかに宝石状の部品を取り付けることで使える品だ。

 ギルド長とのやり取りの結果、生体情報からどこに『プログレス』とその主が存在するか分かるようにしておいた。

 悪用すればその情報が逐一洩れ、地の果てまでも賞金稼ぎに追われる。
 たとえ偽装できたとしても、それならそれで使えないようにするので構わない。

「発売したら、いつ頃売れるかと気になってはいたが……初日から大ヒットだな」

《謎の情報屋、宗教団体、トッププレイヤーたちが情報を回したことで、使用することを望んでいたようです。それに、値段もお安くしてありますので》

「……コスパがいいからな。うん、ただただ金が入ってくるだけだし」

 初期状態の『プログレス』は共通の宝石状態なので、例の複製魔道具があれば好きなだけ増やすことができる。

 好きなだけ増やし、売り捌くことが可能。
 お陰様で生産ギルドといっしょにがっぽり儲けています……そして何より、もう一つの目的を果たしている。

「例の件はどうなっている?」

《着々と。膨大な量のデータが送信されており、私でも少々処理に苦労しています》

「そりゃあ……今度、サーバーに食い込めないか頑張ってみようか。星ごとにサーバーが用意されているみたいだし、アイプスルを掌握した次はレムニアを間借りしよう」

《交渉はお任せください。旦那様には、そのお力を振るってもらいましょう》

 魔石で成長する機械。
 本来の規格よりは少々落ちてしまったものの、それでも多様性が存在した。

 それらの情報を先に言ったどうにかできるシステムを使って、発現した能力を解析させているのだ……それらすべてが、俺の糧となるので『SEBAS』も張り切っている。

「そっちが完成するのは、だいぶ先になりそうだけどな……まだまだ初期状態にお試しの魔石を注いだだけだし、全休人が使い込む必要があるんだし」

《すでに面白いデータが観測できています。試作用の組み合わせと同じ魔石であるにも関わらず、使用者のイメージに合わせて異なる能力が発現していました》

「なるほどな。個人のパーソナリティ、魂魄がスキルを自分の望む方向に進めている……ということか。いずれは唯一スキルと対等以上のスキルに昇華するのかな?」

 段階ごとに制限を設けており、成長すればさらに魔石を盛れるようにしておいた。
 しかし、たとえ同じ魔石でも必ず同じ結果が生まれるわけでもない。

 千差万別の成長を遂げ、使い手と共にこの世界で生きる──それこそが『プログレス』の存在理由である。


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