虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

機械使役 前篇



「【勇者】以外にも、何か便利な能力がある職業とかがあればな」

《でしたら、【調教師】に就くことをお勧めします》

「マイが就いているから、分かるけど……俺だと全然使えないんじゃないか?」

 娘が就いているのだから、念入りに調べてある──【調教師】系統の職業は、従魔と協力して敵を倒す。

 そのため、他の職業よりも突出していることがある──『付随枠』が多い点だ。
 ここに従魔が記され、パーティー枠を減らさないで共闘することができる。

 ……まあ、それでも同時に強化できる数などの問題から、六人分のパーティーに調整する場合が多いらしいが。

「で、俺が就いたとして使えるのか? 俺自身が雑魚なんだが」

《就くことさえできれば、旦那様自身の能力値は関係ありません。枠は職業と結びついているものですので》

「これまでは、【見習い調教師】そのものが存在しなかったことが問題だったのか」

《付随枠の問題もございます。【見習い】のままでは、旦那様が使役状態にあるモノを使うことができません》

 使役はスキルが無くとも可能だ。
 ただし、相手が受け入れる形で魔力のやり取りをしなければならないため、魔物を従える場合……本来はかなり面倒臭いらしいが。

 そして、使役とは魔物以外にも対応する。
 ただし僅かでも知性を宿し、能力値などが表示できる存在に限られるが。

「俺の場合は、カエンと……アレだよな」

《はい。経験値を注ぎ、【調教師】のカンストと機械特化の【調教師】系職業に就くことで、どうにか可能となります。しかし、アレにはそれをするだけの価値があるかと》

「……いちおうでもボス級だしな。まあ、当然と言えば当然なんだが」

 かつて、俺は機械を一つ貰った。
 それを魔改造し続けた結果、ただの機械に命が宿って一時期暴走していたのだ。

 俺は封印することを選び、『SEBAS』に再起動したときに問題が生じないようにと頼んでおいたのだが……どうやら、このときのためにカスタマイズしていたようだな。

《存在偽装を使えるようにしておいたので、リミットブレイク機構を使わない状態で運用するのであれば、どうにか先ほどの計算で従えることが可能です》

「……そこまでしないとダメなのか。いったい、どれだけアレから改造したんだよ」

《私は旦那様ではないので、あまり大規模な改造はできませんでした。必要な兵装を取り揃え、亜空間から取り出す……それぐらいのことしか》

「充分にチートだからな、それ」

 見た目以上に弾薬がある。
 それだけで、銃だろうと相手を殺す一因になりかねないのに……ボスの攻撃数を誤魔化すとか厄介この上なくないか?


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