虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

騎士の友 後篇



「【勇者】。その名がどういったものか……『生者』は知っているか?」

「えっと、まあ凄くて【魔王】を倒す使命があるって感じか?」

「合ってはいるが、詳細な部分が皆無だな。先ほども言ったが、【勇者】とは人族の希望の集合体だ。自分たちにとって都合の良い、理想を汲んだ職業といってもいい」

「……誰が、と訊いた方がいいのか?」

 基本的に初期の人族は魔物より弱く、職業やスキルなどのシステムの恩恵を受けることで対抗できるように強くなっていく。

 それでも、全人族という意味では魔物の方が強い……この世界では質より量という言葉が成立してしまう。

 それゆえに、強い者は強さを突き詰める。
 しかし弱者は弱者のまま、ただ掴めなかった理想を抱くことに……。

「人族の中にも強者はいる。そうした姿を羨み、尊び、願う……それに星は応える」

「星か……いろんなところで出番があるな」

「神もまた、生きているのだ。感情を宿す者が平等に願いを叶えることはできない。星こそが私たちの意志に応える存在だ」

「俺の世界だと、神が星を創ったって神話もあるんだけどな。『鶏が先か、卵が先か』。因果のジレンマなんだが、そんな感覚に陥りそうだ」

 神の存在が実証されているこの世界ならまだしも、地球だと……どうなんだろうか?
 ただの一般人には、考えても仕方のないことなんだけどさ。

「話を戻そう。それゆえ【勇者】の能力は、人族にとって都合のよいものだ。力を高めるには自分たちを助けさせる必要を生み、魔物の駆除も行わせることで、両者ともに利益を生み出している」

「……星って、計算高いのか?」

「人族がそれを望み、星はただその意を反映させただけのこと。【勇者】とは役割、派生するものは誰かがその【勇者】にそうあって欲しいと願うからこそ生まれるのだ」

「ふむふむ……貴重な意見だな」

 俺の場合は……物作りと【勇者】の両方を知っている誰かが、その二つを重ねて考えたからってことか?

 あとは:DIY:スキルもかな?
 物作り特化のスキルなんだから、【勇者】としてもそう願った……的な。

「──これくらいでいいか?」

「ああ、充分だった。なら、これをやる。焼き串じゃないけど、お菓子作りも最近はやっているからな……知りたかった情報以上の分のお礼ってことで」

「こ、これは……本当にいいのか!?」

「材料そのものは簡単に集められた物だし、作業にもそこまで時間は掛からなかった。王様な『騎士王』には合わないだろうけど……友人のお前にはちょうどいいだろう?」

 今度からは、焼き串以外にも作ろう。
 目を輝かせる新たな友の姿に、そんな風に思う俺だった。


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