虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

騎士の友 中篇



「……分かった。私も『騎士王』として、一度誓ったことに嘘は吐かぬ。以降は──」

「ああそれ、そういう面倒なのが要らないって言っているんだろ? だから、そういう堅苦しい感じで言うのはやめてくれ」

「むぅ……とは言ったものの、いったいどうすればいいのだ?」

「それでいいんだよ。いやなに、別に絶対真面目モードになってくれるなとは言っていないからな。あくまでそれを、表面化しないでくれって言っているんだ。明るく見せてくれれば、こっちも助かる」

 曰く、かつての『騎士王』は基本的に俺と居るときのような状態だったらしい。
 それが自然体であり、真面目モードは後天的になるよう努力したんだと。

 本来、性格的な部分もあるだろう……が、全能にして万能たる『騎士王』の力は、そういった部分にまで影響を及ぼした。

 生まれ持っていた性格を捻じ曲げ、王として求められる資質を後天的に得る。
 その対価として、彼女は精神に幾ばくかの制限を課せられた。

 ──といったことを『ガウェイン』さんが予測していたので、今回の願いを伝えてみたわけだ。

「『ガウェイン』め……あとで覚えていろ」

「やっぱり分かるんだな」

「『生者』がそこまで深く、的確に付け入ってくるのだ。情報提供者が居ることは確実であり、私はそれを一人しか知らない」

「ああ……犯人が一人しかいないなら、詮索する余地なんて最初からないのか」

 まあ、本人もきっと満足だろう。
 ……そうじゃないと俺の頭の中で苦々しい顔で言っている気もするが、きっとただの妄想なので違うに決まっている。

 ──彼ならば、きっとよかったです快く笑みを浮かべているはずだ!


 閑話休題それこそもうそう


 小さな願いは叶えてもらうとして、話題を別のことに切り替える。
 クエストの報酬が言論の自由だけでは、まだ達成にはならなかったようなので。

「──というわけで、俺とお前は晴れて友達なわけだが……実際、【勇者】ってどんなことができる職なんだ?」

「なんだ、結局気になるのか? ふむ、友のためなら教えてやろう──【勇者】とは人族の希望を束ね、力と変える職業。貢献すればするほど強くなり、魔を討つ力も増大する」

「へー、知らなかった」

《開示される情報の中に、そういった旨のものを発見しました。やはり、旦那様が少しでも情報を知っていない限り、見つけづらく設定されているのかもしれません》

 種族レベル999に至ったことで、俺は人よりも多くの知識を得られるようになった。
 が、まだまだ知らないことも多い……今回も、『騎士王』の方が知っていたわけだし。

 うん、とりあえず【勇者】について教えてくれている『騎士王』の話をしっかりと聞くことにしようか。


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