虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
双子談(01)
ツクルの去った迷宮の中。
双子の少女たちは、自分たちが破壊した環境の修繕に勤しむ。
本来迷宮とは、漂うエネルギーを用いることで自動的に修復を行う。
だが、変質してしまっている現状においては、その機能が正常に動くことはない。
故に、彼女たちは壊すために使っていた権能を用いていた。
万象を書き換える願いと変化、二つの力を使えば直せないものはない。
「スカイ、これまでごめんね」
「レープ、いろいろごめんね」
その作業の中で、二人は互いに謝る。
小さな諍いが、まさかここまで大事になりかけるとは思ってもいなかったからだ。
自分たちが間違っているとは思わない。
お互い、もう一方こそが一番だと信じて疑わない……疑わないが、それぞれの主張を尊重することを学んだ。
「オジ様みたいに、変な人もいるもの」
「オジ様みたいに、異常な人もいるね」
「「オジ様みたいに、みんなそれぞれ違う人なんだから」」
双子だからこそ、それまですべてを共にしてきた者だからこそ。
以心伝心、何も言わずとも解してきてしまうからこそ、初めての違いに戸惑った。
どうして自分の主張を理解しないのか。
そのことに違和感を覚え、どうにか自分の意見を押し通そうとした結果……今に至る。
しかし、彼女たちは少し変わった。
人それぞれに信念が存在し、決して折れない主義主張があるのだと学んだ。
そこから、姉妹が自分のことを大切にしていることを強く意識する。
自分以上に自分を愛し、己よりも優先していると割り切った。
──そのうえで、自分よりももう一方が至高なのだと主張を続ければよいだけだ。
「ふぅ……これでいいのかな?」
「ふぅ……これでいいと思うよ」
権能によってそれぞれストックを捧げ、迷宮を即座に修復した。
二人が争った跡も、ツクルが来訪した跡もまったく残っていない。
「もう命がないよ……スカイ」
「もう変化できないよ……レープ」
「「よくよく考えたら、それもこれも全部オジ様が悪い!」」
たしかに自分たちもさんざん権能を振るっていた。
が、もっとも使ったのは、ツクルとの戦闘の最中である。
決して生を手放すことなく、勝つまで何度でも挑むことができる『生者』。
敗北はなく、あらゆる手段を用いて生存する彼を相手にし、二人は力を摩耗する。
「うんうん、これはオジ様に責任を取ってもらわないといけないと思います」
「うんうん、これはオジ様が責任を取る必要があると思います」
「「権能が回復したら、オジ様に責任を取らせなければなりません!」」
そのために、自分たちがしなければならないことは……二人はそのことを、とても楽しそうに話し合うのだった。
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