虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
万戯華境 その11
「ごめんなさい」
「もうしません」
「「わたしたちが悪かったです」」
「ええ、分かればよろしい。一番は一人じゃなくてもいいのです。私の息子と娘が同率一位、お二人は同率三位ということで納得してください」
「「それは納得しない!」」
事情の説明をどうにか済ませる。
予め力を知らしめていたので、特に逆らうこともなく理解させられた。
ただ、唯一子供たちの愛らしさに関しては納得していないようだ……まあ、世の中には自分とは異なる価値観を持つ者が居ることぐらい、俺だって分かっている。
実際に本人を見たならまだしも、俺が持っていた写真だけでは子供たちの良さのすべてが見せらなかった……至らなかったのは俺の問題、諦めるしかない。
「……そう、ですか。それはまた、別の機会に決着をつけることにしましょう。ところでお二方、この迷宮は大丈夫なんですか?」
「大丈夫だよ、オジ様」
「問題ないよ、オジ様」
「「二人が力を合わせれば、できないことは一つもないんだから!」」
「そうですか……って、オジ様?」
最初は『さん』付けだったはずなんだが、いつの間にか変わっていたな。
まあ、【仙王】もなんやかんやで仲良くなれたし、それと似た感じだろうか?
「迷宮はすぐに直すよ」
「問題の方もすぐに解決するよ」
「「だからオジ様、安心して帰ってね!」」
「あー、分かりました。ではお二方、いずれまたお会いしましょう」
敬語で接して、さっさと帰ってもらいたいというのが狙いだったみたいだ。
彼女たちは二人の時間を作りたい、それには俺が邪魔……仲直りしたんだもんな。
というわけで、さっさと撤収する。
すでに『SEBAS』がドローンで迷宮核に接触し、コピーは済ませているのでこれ以上この場に居る必要もないからな。
◆ □ ◆ □ ◆
報告するまでがクエストのようなので、まだ終わっていないと言えば終わっていない。
しかし、すぐに帰る必要もない……迷宮から離れただけで、邪魔ではなくなった。
「……で、報告とはなんだ?」
《【勇者】の能力が一部、解放されました》
「そういえば、レベリングに時間が掛かりすぎて忘れていたな。どうなったんだ?」
《解放された能力は二つ。一つは『迅』系の能力で“光迅鎧”です。こちらは名称で理解できるように、光の鎧を身に纏います》
剣と盾を生み、光速移動ができた【勇者】に、新たなパーツが搭載されたみたいだ。
鎧を着けておけば、それなりに防御力があげられるな。
「もう一つは?」
《“不折諦魂”──効果は一定確率で致死攻撃を無効化する、というものです。なお、これは条件を満たした【勇者】にのみ発現する能力のようです》
「そうか……条件は?」
《生と死の境を彷徨い、致死状態になったうえで戦闘に勝利するというものです。相手との格差や職業レベルがその際の習得確率判定に使われており、今回の戦闘でようやく習得に至ったようです》
今回の旅で得た力が、また増えた。
これに『騎士王』からの報酬もあるわけだし……ふむ、楽しみだな。
──その前に、気づかれるまではこの亜空間で楽しませてもらうけど。
「SF」の人気作品
書籍化作品
-
-
37
-
-
1359
-
-
1
-
-
3395
-
-
17
-
-
239
-
-
93
-
-
37
-
-
63
コメント