虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

万戯華境 その07



「──といった理由です。お二方が迷宮を破壊してしまった以上、外部への影響は計り知れません。どうか、お二人の諍いを諌めてはいただけないでしょうか?」

「ねぇねぇ、スカイ。どういう意味かな?」
「ねぇねぇ、レード。理解できないね?」

「「わたしたちはただ、どっちが可愛いかを比べているだけだよ?」」

「……詳しくお聞かせ願えますか?」

 喧嘩をしていると思って双子の『超越者』の下へ辿り着いたら、二人は喧嘩などしていないと言う……どういうことだろうか?

「レードはスカイが可愛いって思うのに」
「スカイはレードが可愛いって思うのに」

「「全然分かってくれないの」」

「だからレープは考えたの」
「だからスカイは決めたの」

「「どれだけわたしより可愛いかを、その身に教え込むんだって!」」

 つまり、なんだろうか……互いに互いが可愛いと主張し、その意見を押し通すために喧嘩しているのか?

「ルールは簡単、負けた方が勝ち」
「ルールは簡単、勝った方が負け」

「レープは命を捨てて、それを教える」
「スカイは身を捧げて、それを伝える」

「「あなたは可愛いんだって、だから自分を卑下しないでって!」」

「……なるほど、分かりました」

 彼女たちの主張は分かった。
 要するに、素晴らしき姉妹愛ゆえの闘争というわけか……うん、イイハナシダナー。

 自分たちの台詞が正しいと主張し、もう片方の言葉を否定する。
 今も、先ほどの発言に不満があるのかそれぞれ主張を行っている。

 ──が、それ以上の思考は無意味。
 子供を愛する家庭にとって、自分たちの子供こそがもっとも可愛いと主張するようなもの……つまり、彼女たちは間違っている。

「貴女がたは間違っております。たしかにお二人も可愛いでしょう……が、しかし! 真に可愛いと呼べるのは、私の息子と娘! 残念ながら、お二人ではないのです」

「「…………」」

「ねぇねぇ、スカイ……どうする?」
「ねぇねぇ、レープ……どうしよう?」

「「どっちがあのオジさんをやっつけるか、それで決めようよ?」」

 事実を突きつけられて、二人は口論を止めてこちらを睨んでくる。
 好都合である、この展開であればすべてを解決することが可能だ。

「分かりました……では、改めて自己紹介といきましょう。私は──」

「先手必勝、レープの勝ち!」

「私はツクル、『超越──」

「外してるよ、レープ。スカイが貰うよ!」

 一度目の攻撃は、完全無詠唱で発動した魔法による一撃。
 それをまともに受けた俺だが……死んでリセットすれば、すぐに元通り。

 それを何らかの方法で攻撃を躱した認識され、二発目の攻撃を受ける。
 今度は無数の属性を帯びた魔力弾……今度は彼女たちの目に見える形でくらう。

 ──が、死ねば何度でも活動可能だ。

「私は『生者』。貴女がたが真の可愛いを認めるまで、理想を語る者。お嬢さん方、私を殺したくばその想いをぶつけなさい」

 可愛いのはショウとマイに決まっている!
 二人には悪いが、それを決めるのであれば容赦はしないぞ!


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