虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
万戯華境 その03
「到着っと……魔物の攻撃がひどかった」
現在、俺は荒れ狂う嵐の中で飛んでいた。
言い方に問題があった──正しくは、嵐の中で舞い上がっていた、だな。
もちろん、テンション的にではなく、物理的にではあるが。
今も『SEBAS』のサポートが無かったら、三半規管が狂って吐いていただろう。
「風と雨、あと雷が死亡理由なのが多いのかな? この先で何か起きたら、とりあえず大量消費しても問題なしっと」
死んでも即座に蘇える、それが『生者』の権能である。
そこに死亡原因をアイテム化する『死天』の能力が合致し、即座の迎撃が可能だ。
おまけにこれ、原因の方よりも即死性を高めているからかなり厄介。
前に一度相殺できるか試したことがあるのだが、一方的に蹂躙していたよ。
「ところでこれ、いったいいつまでグルグル回っていればいいんだ?」
《もう間もなくです。亜空間の反応が、突如として出現しました》
「えっ、マジで?」
《人族では認識できませんし、亜空間そのものに死を招く要因はございません。もしそうなのであれば、旦那様の警鐘は星という概念そのものに死を感じ取り、延々と鳴り響くことになるでしょう》
それは……たしかにそうだな。
自然災害を発生させる星、そこで生み出される死者の量などから考えてみてもかなりの危険度を感じ取ってしまうだろう。
亜空間もまた、それと同じこと。
存在するだけで悪と処される……これに該当するのは、【魔王】ぐらいだろうか?
「あとは転移されるのを待つだけだ。具体的にはいつぐらいなんだ?」
《三秒後です》
「……えっ?」
その一言が、俺のこの世界における最後の発言に……ならないように頑張ればな。
◆ □ ◆ □ ◆
万戯華境
飛ばされた先で見たのは──暗雲だった。
そういえば台風ごと運ばれたのだから、当たり前といえば当たり前だ。
「『SEBAS』、ここからすぐに脱出した方がいいのか?」
《いえ、しばらくはこのままで。魔力嵐と呼ばれるこの台風の中であれば、索敵をされてもバレる可能性はほとんどございません。止むまでに、こちらで亜空間の調査を済ませておきたいのです》
「分かった。ただ、一機だけでいいから視覚のリンクをさせてほしい……さすがにこのままでいるのは、ちょっと飽きるからな」
《畏まりました。では、そのように手配を進めておきます》
この地でいったい何が起きて、『超越者』の双子に何があったのかを調べるのが今回の依頼内容だ。
ドローンが無数に台風の中から飛び去って行く……うん、ちょっとだけ羨ましいや。
だからこそ、視覚を間借りして調査を行うのだ──リアルスコーフ°、ゴーーーッ!!
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