虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
情報屋再訪 後篇
職業に関する情報は受け取った。
これで前回の用件は済んだ……なので、今回の用事を果たすことにしよう。
「──かくかくしかじかなんだ。頼むぞ」
「分かるか! 一から百まで全部言え、じゃないと協力できないぞ」
「ったく、ノリが分からないやつだな。仕方ない、耳の穴をかっぽじってよく聞けよ?」
「なんでそんなに上から目線なんだよ……」
相手は知っている情報屋、現実での同僚であるタクマだからな。
気軽に話すことができるが、隠さなければならない情報はちゃんと隠しておく。
「実はな、ある調査をクエストとして受けることになったんだ。ただ、すべての大陸で発生する面倒臭い現象らしくて……少なくとも俺たちが活動している場所で起きたものだけでも、知っておきたいってわけだ」
「どういう現象なんだ?」
「突如として、自然や災害がなくなったかと思えば別のところで出現する。神隠しに遭ったと思った人が別の場所で発見された……みたいな感じのヤツだ」
「それぐらいなら今すぐに調べられそうだ。少し待ってろ」
タクマ、そして情報屋のように振る舞っている者たちは、大抵【記者】に就いている。
あの【情報王】が就くそれも、【記者】が下級職となっているものだ。
その効果はタクマが目の前でやっているように、データベースの構築。
いつでもどこでも記事が作れるよう、就職中のみ使えるUI的なものが与えられる。
そして、それは【記者】同士で共有することも可能で……タクマは現在、俺の言った話に該当する情報がないかを、そのサイトのような場所で探しているというわけだ。
《正確には、【記者】には星を介した情報通信を可能とするようプログラムされているようです。そのため、投稿した情報には星が閲覧制限を行い、権限を上げなければ見ることができないということもある模様》
「……たぶんだけど、上位の職に就くのってそれが関係するよな?」
《はい。投稿数、閲覧数、被閲覧数などで権限が上昇すると上位の職に就けるようになります。【情報王】もそれが条件です》
俺には一生掛かっても困難な条件だった。
自分で記事を作り、周りの記事を読み、さらに読んでもらうことで【記者】として成長していくというわけだ。
ちなみに、『SEBAS』によるといわゆる『読み専』用の職業もあるらしい。
……職業レベルに余裕があるやつじゃないと、そもそも【記者】に就かないだろうに。
「──あった」
「おっ、この大陸でか?」
「いや、別の大陸でだが……ある程度規則性が確認されているみたいだ。だから、そこから逆算すると──約一週間以内にこの大陸のどこかに現れると思う」
意外とすぐに見つかりそうだ。
……さて、一週間なら相応の準備をして迎え入れられるな。
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