虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

事情把握



《──というわけがございました。旦那様に伏せていたのは、知ることで何かしらの問題が生じることを避けるためでした。大変申し訳ありません、執事失格です》

「いや、秘密の一つや二つは当然だ。俺はお前に従順な機械みたいなことを求めているわけじゃない、家族のように支え合う関係の方が何億倍も嬉しい……ただまあ、今回の秘密は少々スケールが大きかったがな」

 すでに初めての冒険は終了している。
 例の魔物は討伐され、そのレアドロップである武装はショウのものとなった。

 解散し、独りになったところで事情をすべて『SEBAS』に訊ねているのが現状だ。
 なんだか難しい単語が多い話だったが、要するに割とグレーな行為だったんだとか。

「そりゃあ自分でボスを創って、それで恩恵がっぽりじゃゲームとして運営している意味が無いよな」

《アイプスルにおいて、旦那様は神と同格の存在です。他の世界へ魔物を解き放たない限りは、神々も干渉してはこないでしょう》

「じゃあ、ショウの持っていったあのドロップはどうなんだ?」

《育ちはどうあれ、あくまでシステムに則り誕生した個体です。そのドロップ品にまで文句を付けていれば、創意工夫の類いすらも世に栄えることが無くなります》

 要約すると、少しの裏技ぐらいなら許容するからセーフってことか?
 もともとアイプスルの品を持ち込んでいるのだって、半ばグレーみたいなものだしな。

「ちなみに『SEBAS』、ああいうヤツをいったいどれだけ確保している?」

《…………》

「そうか、なら仕方ないか。さっき言ったばかりだし、わざわざ言わないのが正解だな」

《申し訳ありません、旦那様》

 知ったうえで行動するのはダメ。
 あくまで偶然遭遇し、討伐するからこそ正常にシステムは作動する。

 ショウのドロップしたアイテムはかなり高性能だったし、ネタバレをして損をするのは避けておきたい。

「『死天』は死に関するアイテムしか作れないから、ああいう殺さず生かさずの選択ができるアイテムは便利だよな」

《…………》

「ああいや、そういうのが欲しいとか要求ではないからな。あまりそういうのに頼らないでやっていくのが、生産者ってものだろ?」

《旦那様の場合、ドロップするのはアイテムではなく魔物の素体そのものになる可能性が高いです。それを用いて、自分なりのアイテムとする……世間一般的に、生産者や周囲に優れた生産者が居るとそうなります》

 さすがはユニークモンスター。
 能力を俺より優秀な鑑定スキルで調べた家族も、使えるアイテムだと言っていたな。

 それよりも、さらに便利なアイテムを創るのか……:DIY:がいればお安い御用だな。
 おまけに【救星者】があるので、補正も付けられるかもしれない。


「虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「SF」の人気作品

コメント

コメントを書く