虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
家族冒険 その19
「さぁ、今こそ力を合わせましょう!」
「「「おー」」」
「声が小さいわよ!」
「「「お、おーーー!!」」」
ルリの提案、それは階層を入れ替えて全員で相手をしても苦戦するような相手を用意してくれというモノ。
さすがに『SEBAS』でも大変な作業を要したようだが、それでも俺とルリの階層攻略が終わる頃には終了していた。
そして、降臨する強大なラスボス。
今回のトリを務めるのは、レベル250の狼──『孤軍破狼[シャロウ]』。
「──って、ネームドモンスターじゃん!」
「ネームドモンスター? なんだ、それ」
「お父さん、もしかして見たことないの? ネームドモンスターは名前を持っている魔物の総称で、倒すと特別なアイテムを貰えるのよ。魔獣とか聖獣はだいたいそれよ」
「なら、風兎はそれなのか」
休人がスキルで生みだした魔物は含まないらしいので、傀児であるカエンはだいぶそれに近いが違っているようだ。
同じように、スキルで使役された魔物がそうなることもない……名前を与えることはできるが、それを自分で殺してレアアイテムを得ないようにするためだろうな。
「まあ、とりあえず倒せばいいのか……そのレアアイテムってMVP制なのか?」
「父さん、それよりも早く──もう来る!」
「なら──『地裂脚』」
一気に駆け寄ってくる狼に向け、足を踏み鳴らして地割れを起こす。
すぐに距離を取り、こちらを睨む……そして、けたたましく咆える。
「これは……みんな、全方位に警戒! 上も下もだ!」
死亡レーダーが示すのは、360°から迫る脅威……つまり魔物の反応だ。
影、地面、風、空──至る所から生みだされる狼型の魔物たち。
「ネームドモンスターってこんなに凄いヤツなのか……名前が付いただけなのに」
「いえ、お父さん。普通はこんな規格外な強さになるはずがない……なら、一撃加えれば倒せるレベル──ッ!?」
「マイ! ──[モルメス]!」
鞭を一振りして自身に迫る魔物を打ち払おうとするマイだったが、本人の予想とは裏腹に狼たちは攻撃を受けても消えたりしない。
俺がモルメスを投げると、狼は苦痛に満ちた悲鳴を上げて倒れ伏す。
その体は消えることなく、スキルで生まれた仮初の存在ではないことを表した。
「まさか……そんな、ユニークモンスターなのッ!?」
「また新単語か……要するに上位版か?」
「父さん。前に俺はユニークモンスターに遭遇したことがあったんだけど、ソイツは物理攻撃と魔力攻撃を、特定のダメージじゃないと吸収する能力を持ってた。そういう凄い能力を持つのがユニークモンスターなんだ」
「……そりゃあ、報酬もレアなんだろうな」
ぜひとも、家族にプレゼントしたくなる。
だがしかし……『SEBAS』、いったいどこでそんな凄い奴の同類を用意したんだ?
コメント