虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

家族冒険 その17



 それからというもの、現れる魔物すべてが厄介な性質を兼ね揃えていた。
 ショウとマイはそれらを分析し、最適な行動を見出せるようになっていく。

「次、まずは避けて! それから拘束して試してみるわ!」

「じゃあ、俺も攻撃を……って、当たらないからたぶん霊体!」

「見た目は普通なのに……霊体拘束用の武技が効くから、ショウもそっちでやって!」

「了解!」

 狼型の魔物なのだが、スキル(霊体化)を隠し持つ集団であった。
 それに即座に気づいた二人は、対霊体用の戦い方を始める。

「成長したな……二人とも」

「ええ、本当に」

 俺たちは師匠っぽいポジションに立ち、それっぽい台詞セリフを言う。
 なんだか気分が出るのだ……隣に立つルリも、心なしか満足げだし。

「アナタも、そろそろ出てみればいいんじゃないですか?」

「うーん……俺ってさ、便利すぎるだろ?」

「ええ、間違いなく」

「何をやっても、絶対に二人のやることが一つは無くなると思うんだ。ボスの時ならともかく、普通の魔物相手にその便利さを覚えると……たぶんやる気が失せると思う」

 広範囲の索敵、効果が非常に高い強化ポーション、どんな相手にも対応できる無数のアイテム……まだまだ他にもある。

 それらは千階層あるすべてのフィールドと魔物に対応できるため、一度使って楽を知ってしまうとなかなか戻れなくなってしまう。

「だから今は解体に徹しているわけだが……魔法の練習も終わったし、次は何をすればいいのかな?」

「うーん……何もないのかもしれないわね」

「だろう?!」

 俺の戦闘スタイルを一言で纏めるのであれば──『究極の個』だ。

 自ら作り上げたアイテムによって隙をすべて塞ぎ、『生者』の権能で個人生存特化を実現している。

 魔物の攻撃は死んでからやり返せば対応可能だし、アイテムを使えばだいたい可能だ。
 弱者も強者も関係なく、時間さえあればすべてに倒すことができる。

 一番重要なのは、パーティーを組んでいてもある意味単独になってしまう点。
 回復や支援を必要とせず、どの場所に居ても対応可能。

 おまけに俺ごと攻撃しても全然問題ない。
 パーティーに居ながら、まったく異なる行動を取る……それができてしまう。

「──というわけで、階層ごとにやることを決めればいいんじゃないか?」

「なるほど……考えたわね」

「ルリもいっしょにやらないか? 二人でやれば、きっと楽しくなる!」

「ええ、その通りね!」

 なお、この後マイが『一度交代すればいいじゃない』という発言で、すべてが解決するのだった。


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