虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
家族冒険 その16
さて、二百五十一層に入ってから再びマイとショウは苦戦を始めた。
ルリの支援魔法は働いている、それでも苦しくなる魔物たちがこの層からは出現する。
「父さん、なんでスライムから攻撃を受けたら、こんなにHPが減るの!?」
「──ん? えっと、『SEBAS』によると一割固定ダメージらしいぞ」
「固定ダメージ!?」
しかも最大値から計算するらしいので、回復しなければ確実に十回攻撃を受けると死んでしまうという最悪の存在であった。
「二人とも、スライムだけに気を使っちゃダメだからなー。そっちのゴブリン、受けたらしばらく最大HPが減るからなー」
「「え゛っ?」」
『グギャギャギャ!』
回復したくとも、その回復すべき生命力が失われてしまえば行うことができない。
相手の生命力が多いほど痛手を受けるスライムと、治らない傷を与えるゴブリン。
二百五十一層──種族の限界を超えた者たちが最初に訪れるのは、かつての雑魚たちが猛威を振るう油断できない階層であった。
「ルリ、回復できないか?」
「……ダメみたいね」
「お母さんでもかぁ……ショウ、できるだけゴブリンの攻撃を受けないように倒すわよ」
「う、うん!」
スライムの攻撃は一気に一割減るというだけで、回復することができる。
問題はゴブリン、いつまで最大値が減るのか分からない以上避けなければならない。
なお、二百五十一層なので魔物たち自身の生命力も相応にある。
攻撃パターンは通常個体と変わらないが、なかなか死なないのだ。
「よく見て、しっかりと躱すんだぞー。あと次の階層に行くまで、HPはずっとそのままになるからな」
「「もっと早く言ってよ!」」
子供たちにはそう言われてしまうが、実感してもらうためにもあえて隠した。
……なお、俺のポーションを原液で飲めば普通に治ります。
たぶんだが、ルリの魔法も最大限に振る舞えば治すことができるだろう。
しかし、俺たちは顔を見合わせ……互いに理解する──まだ、そのときではないと。
「いいか、二人とも。今はまだゲームとしてもまだまだ初期、そこまで強い魔物は出てこないかもしれない」
「でもね、時間が経てば経つほど面倒臭い相手が出てくるようになるのよ」
「一定時間無敵、人数に比例した強化、失敗したら即死……本当に面倒なんだ!」
「ええ、アレは本当に苦戦したわね」
二人は驚愕する……ルリの言葉に。
どんなことでも(無自覚な)運で解決! そんなルリでもできないことがあると。
なお、ルリだけはそのときも死ななかったが、一定以上の人が死ぬと自動的に敗北判定になるため強制終了してしまっただけだ。
──うん、やっぱりルリは最強である。
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