虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
家族冒険 その14
そもそもの必要経験値が、魔物と人族とではまったく異なる。
弱い魔物ならば異様に少なく、強大な魔物であれば非常に多い。
迷宮の階層に合わせたレベルの魔物が出てくるということは、その魔物の強さにムラが生じるということだ。
スライムなどであれば簡単に、ドラゴンであれば……生死を賭けた闘いとなる。
すでに階層は百四十一層──ルリの予想した、苦戦し始める階層だ。
「アナタ、どちらが手伝います?」
「まだまだ、両方が参加すると過剰戦力になるからな……けど、俺は強者殺しになっちゃうから、ルリしか選択肢が無いぞ。俺も出番は欲しいが、それ以上にみんなに楽しんでもらいたいからな」
「そう言ってくれると思いました。任せてください、二人のサポートはこちらできっちりとやっておきますので」
現在、子供たちが戦闘を繰り広げているのは『ストームイーグル』という鷲型の魔物。
二回進化を行った個体らしいが、かなり上手く戦闘を行っている。
嵐の鷲、そういう名前なので、嵐が翼をはためかせるたびに生みだされていた。
空を飛んでいる癖に、そのせいで二人の攻撃が届かないのだ。
マイが従魔を使えば話は別だったかもしれないが、現在はそれを禁じているの自分たちで戦うしかない。
ショウは風魔法を使って空を飛ぶことができるが、鷲が妨害するので飛べずにいる。
苦戦……このままでは、かなりの長期戦となってしまうだろう。
「──“竜乃息吹”!」
しかし、地上から天へ遡るように光の柱が注がれる。
先端が竜の頭部を模したそれは、うねることで竜を再現し──鷲の体を抉っていく。
『ピィーッ!?』
今では聖女やら神祖となっているルリではあるが、もともと始めた頃の種族は竜の力を操ることができる【宝玉獣】。
その力は、さらに強化された状態で今なおルリのモノだ。
一撃で鷲を地に墜とすと、続けて魔法で二人の補助を行う。
「さあ、今よ!」
「「うん!」」
そこからはスピーディーな決着だ。
嵐を口から吐いたりして抵抗したが、飛べない以上二人の攻撃の射程範囲となる。
マイの攻撃が鷲を拘束し、トドメの一撃はショウの鮮やかな斬撃。
頭を切り落とされた鷲は絶命し、完全に活動を停止した。
「さて、俺の出番だな」
途中の階層からは、俺が時々魔物の解体を行うようになっていた。
器用さ999とはそれなりに使えるので、綺麗に捌くことができる。
このとき、【救星者】の能力で【解体士】系の職業スキルをセットしておく。
解体スキルは使えずとも、補正が働き手に入る素材の品質が向上するからだ。
──うん、俺の現在の担当は冒険者ではなく支援者である。
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