虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
家族冒険 その12
「──キュってやってポッとやるのよ」
「……すまん、全然分からん。俺は感覚じゃなくて理論じゃないとダメらしい」
ルリから魔法を教わろうとしたが、残念ながら言語機能にエラーが生じたらしい。
なお、俺自身は理論派ではなく感覚派……難儀だと自分でも分かってはいるけどさ。
ここは家族で情報をシェア、とかそういうノリでルリに頼んだのだが……どうやら無理そうだな。
「仕方ないな」
「……ごめんなさい」
「気にすることはないさ。俺がルリの教え方に対応できなかっただけだ。『SEBAS』に任せて、使えるようにしよう」
《お任せください、旦那様》
とはいえ、いかに『SEBAS』とてこのままでは理論を教えることしかできない。
それでも充分なのだが、とある方法を使えば魔法を俺に叩き込むことが可能だ。
「じゃあ、飲むぞ」
とある物質(極小)が大量に内包された透明な液体を、覚悟を決めて嚥下する。
すると、体に変化が……なんてことは特に無いが、これでできるようになることも。
「ルリ、魔法を何か一つ頼む」
「はい──“霊魂消滅”!」
ルリが使ったのは、名前の通り魂とかを強制的に消滅させるという魔法だ。
俺の知識によれば──これって神聖魔法とかいう聖女とかの特定の人物しか手に入れることのできない魔法なうえ、さらに使いこなすのに才能が必要なはずなんだけどな。
「はあ……ちょっと逝ってくるな」
「逝ってらっしゃーい」
そんなこんなで、俺に向けて発動された魔法が俺の霊魂を消し去ろうとしてくる。
さすがにこの死に方は初めてだ……とか思いながら普通に死に、瞬時に復活した。
神様の力を借りて得た権能なので、どうやら完全に消滅させられることはないようだ。
なんか、空から光が注いでいるが……その間もバッチリ死に続けている。
確率判定なのかそれとも永続ダメージなのか……いずれにしても、相当な数のお土産が生産できそうだな。
「──とまあ、要は今のルリの周りで起きた現象すべてを『SEBAS』が解析。それを俺にできる形で実行させることで、魔法を使えるようにするらしい──『霊魂消滅』」
スキルも何も持っていないので、あくまで再現の域を超えない。
スクロールですでに覚えているが、それはシステム的に使えるようになるだけ。
要するに、魔法とは魔力の運用方法をプログラムしてあるソフトのようなもの。
スキルに載っている魔法なんかは、その面倒な行程を自動で処理してくれるのだ。
スクロールを読めば、スキルを持たずともその魔法が登録されて使えるようになる。
ただし、そのままだと俺は使えない……自動処理の負荷にも、耐えられないからな。
──うん、虚弱ですので。
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