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虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

家族冒険 その09

先日は、月末更新で大量に更新していますのでぜひ
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 それからしばらく、個々で行ってみたい場所に向かうことに。
 真の冒険はこれからなのだが、心残りがあると満足できないだろう……という考えだ。

「いい湯だな」

「ええ、いい湯ね」

 俺とルリは温泉にやってきていた。
 ……いや、俺は別の場所に行こうとしたんだが、ルリに呼び止められたのだ。

 ちなみに場所は家族風呂、今回は・・・互いに休人の初期装備であるインナーを付けている。
 特別なこと・・・・・をしない限り脱げないので、そのまま着用しての入浴だ。

 だがまあ、そんな布一枚で隠せるほどルリの魅力は地味ではない。
 水の滴る髪、水を球にして弾く肌、上気した頬など……体のすべてが俺を獣にする。

 ──まあ、常時死んでいる影響でなってもすぐに平常になるんだけど。

「これから本当に迷宮で冒険だ、その前に英気を養わないとな。ただ、子供ってのは元気だな……まさか、二人でまた戦いを挑みに行くとはなー」

「マイの従魔さんたちも居るみたいだし、大丈夫よ。それに……アナタの方でも、見てくれているんでしょう?」

「カエンと風兎にな。何かあったらすぐに連絡してくれるだろう。大丈夫だろうけど、心配なものは心配だ」

「ふふっ、別にいいじゃないの。私だって同じ思いよ……けど、いつかはそうできなくなる日も来るのかしら?」

 二人はまだまだ子供だが、反抗期やら思春期やらが来るかもしれない。
 特にマイ、洗濯物を一緒にしないでとかそういうことを言うように……。

「ぶくぶくぶく……」

「あなた、しっかりして──“精神回復マインドヒール”」

「あっ、ああ……本当に良くなるんだな、どういう原理で機能しているんだか」

 死んでリセットでも良かったが、HPと違い俺の精神はすぐには死ねない。
 ルリの魔法は俺の傷ついた心を癒してくれる……うん、まだ希望はあるよな。

「ところでルリ……近すぎないか?」

「? 何がかしら?」

「いや、その……いろいろと」

 我らが『SEBAS』による湯気さんや謎の光が視覚情報を欺瞞してくれてはいるが、肉体的接触に関してはどうにもならない。

 倫理コードは解除済み、艶めかしい感触を俺の肌が感じ取ってしまう。

「もちろん、あの子たちも居るのよ。アナタの考えるようなことをするはずがないじゃないの」

「そそ、そうだよな……ところで、俺が何を考えているのか本当に分かっているのでしょうか?」

「ふふっ、試してみましょうか?」

「……えっ? お、おい、ちょっと……や、止めて、あっ、ちょ、あっ──あーっ!」

 俺から言えることはただ一つ、ある意味俺もルリもスッキリしました。


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