虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
家族冒険 その01
連続更新です(05/12)
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始まりの街──休人たちが一番初めに訪れるであろう場所、スタート地点。
そここそが、俺たちの初めての共同作業に相応しい場所だと考えた。
なので、俺はそこで待っていた──愛すべき者たちを。
「あなたー!」
誰という固有名詞の無い声が、俺の待つ噴水広場に木霊する。
決して声を張り上げたわけではないが、不思議とそれに誰しもが注目した。
──それだけの魅力を、兼ね揃えた女性なのだ……俺の妻は!
「ごめんなさい、遅れたかしら?」
「…………」
「もう、どうしたの?」
「……いや、やっぱり可愛いなって」
教祖をやっているような立場なので、姿は変装してのものだ。
髪や目の色を変え、休人たちがよく使う金髪と青色にしてある。
それでもなお、彼女の愛らしさを奪うことなどできない。
普段と違う色でも、噛み合う美貌が変装という行動を無駄にしてしまっている。
たしかにルリを休人名『アズル』だと勘違いする者はいない……が、絶世の美女がそこにいることに変わりないのだから。
「──『SEBAS』」
《畏まりました──防衛武装展開、奥様への存在偽装を開始します》
「あら、セバス君も居たのね」
《お久しぶりです、奥様。皆さまの冒険を快適に送れるよう、サポートを行わせていただきます》
一体のドローンに音声機能を持たせ、ルリと話す『SEBAS』。
ルリも『SEBAS』のことは肯定してくれているし……うちの新しい子供扱いだ。
そんな『SEBAS』によって、ルリの姿が映像として投影される。
もう一人のルリが生まれ、それはスタスタと別の場所へ移動していった。
「これで、他の奴らは勝手に勘違いしてくれるだろう。今、本当のルリを見ることができるのは……俺たち家族だけだ」
「あらあら、セバス君は凄いのね」
《お褒めに与り光栄でございます。しかし、それらはすべて旦那様の──》
「いいのよ、セバス君のやったことはセバス君が褒められることなの。お父さんも、セバス君が喜ぶ方が嬉しいわよ」
まったくその通りだ。
俺に……俺の家族に尽くしてくれるAIを始めは望んだが、共に居て自分が生みだしたとなれば親愛が芽生えていた。
そんな『SEBAS』が喜んでくれるのであれば、俺も嬉しい。
だからこそ、あの手この手で褒めてはいたのだが……そのまま今に至っていた。
ルリは凄いな……やりたくてもやり方が分からなかったことを、無自覚でやり遂げてくれているのだから。
「さて、あとは二人を待つだけだな」
「そろそろ来るわよ──ほら、ちょうどあそこに居るじゃないの」
「……うん、展開が速くて何よりだ」
望んだからこそ、着いたのかも……それがほぼ確実だな、と思う俺と『SEBAS』なのだった。
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始まりの街──休人たちが一番初めに訪れるであろう場所、スタート地点。
そここそが、俺たちの初めての共同作業に相応しい場所だと考えた。
なので、俺はそこで待っていた──愛すべき者たちを。
「あなたー!」
誰という固有名詞の無い声が、俺の待つ噴水広場に木霊する。
決して声を張り上げたわけではないが、不思議とそれに誰しもが注目した。
──それだけの魅力を、兼ね揃えた女性なのだ……俺の妻は!
「ごめんなさい、遅れたかしら?」
「…………」
「もう、どうしたの?」
「……いや、やっぱり可愛いなって」
教祖をやっているような立場なので、姿は変装してのものだ。
髪や目の色を変え、休人たちがよく使う金髪と青色にしてある。
それでもなお、彼女の愛らしさを奪うことなどできない。
普段と違う色でも、噛み合う美貌が変装という行動を無駄にしてしまっている。
たしかにルリを休人名『アズル』だと勘違いする者はいない……が、絶世の美女がそこにいることに変わりないのだから。
「──『SEBAS』」
《畏まりました──防衛武装展開、奥様への存在偽装を開始します》
「あら、セバス君も居たのね」
《お久しぶりです、奥様。皆さまの冒険を快適に送れるよう、サポートを行わせていただきます》
一体のドローンに音声機能を持たせ、ルリと話す『SEBAS』。
ルリも『SEBAS』のことは肯定してくれているし……うちの新しい子供扱いだ。
そんな『SEBAS』によって、ルリの姿が映像として投影される。
もう一人のルリが生まれ、それはスタスタと別の場所へ移動していった。
「これで、他の奴らは勝手に勘違いしてくれるだろう。今、本当のルリを見ることができるのは……俺たち家族だけだ」
「あらあら、セバス君は凄いのね」
《お褒めに与り光栄でございます。しかし、それらはすべて旦那様の──》
「いいのよ、セバス君のやったことはセバス君が褒められることなの。お父さんも、セバス君が喜ぶ方が嬉しいわよ」
まったくその通りだ。
俺に……俺の家族に尽くしてくれるAIを始めは望んだが、共に居て自分が生みだしたとなれば親愛が芽生えていた。
そんな『SEBAS』が喜んでくれるのであれば、俺も嬉しい。
だからこそ、あの手この手で褒めてはいたのだが……そのまま今に至っていた。
ルリは凄いな……やりたくてもやり方が分からなかったことを、無自覚でやり遂げてくれているのだから。
「さて、あとは二人を待つだけだな」
「そろそろ来るわよ──ほら、ちょうどあそこに居るじゃないの」
「……うん、展開が速くて何よりだ」
望んだからこそ、着いたのかも……それがほぼ確実だな、と思う俺と『SEBAS』なのだった。
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