虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
干渉否定 後篇
そして俺たちは、再び出会う。
案内された部屋で待っていた愛しい人に駆け寄り、ギュッと命懸けのハグを行った。
「アナタ!」
「ルリ!」
今さらながら、ゲーム内で現実の名前を言うのは禁句だろという意見もあるだろう。
補足するならば、ルリにそうしてくれと言われているからこそやっている。
……現実でも調べれば分かるぐらいの有名度のうえ、本人が望まない限りトラブルとも無縁なので、ぜんぜん隠していないオープンなゲームスタイルを取っているのだ。
オンゲでも、名前がどうあろうとやっていることで即座に見抜かれてしまう。
……気にしなすぎるのは、当時から心配していたけどな。
まあ、EHOだと[NGワード]機能が搭載されているので問題ないんだけど。
理論や理屈はさっぱりだが、要するに隠すべき情報が周りには分からない機能だ。
「……うーん、奥が深いよな」
「あら、急にどうしたの?」
「いや、[NGワード]についてな」
「あんまり使ったことが無いわね……実際、どういう感じなのかしら?」
俺も初期に設定して、自分がやったことを完全に忘れていたしな。
暇潰しに[ログ]を見たときに、機能していることを見て思いだしたぐらいだし。
「俺も分からないんだよな。前に気になって調べてもらったら──『相手にとって都合のいい単語に変換される』って言われたんだ。翻訳機能の応用らしいな」
「そうね。『好き』って言葉が『Like』と『Love』、みたいな感じに分かれている感じかしら? アナタにだけは、自動的に『Love』って伝わるみたいに」
「……俺だって、いつでも『Love』だ」
「──アナタ!」
「──ルリ!」
激しく抱擁をし、再び死ぬ俺。
……ルリに殺される時は、経験値を解放しているぞ。
ルリが一度目の抱擁をする前に人払いをしているため、俺たちを止めるものは何も存在しない。
しばらく俺たちはその愛を確かめ合い……満足してから本題に移った。
「全員の自由な時間を確保するため、もっとも暇な俺がどうにかしてやろうと張り切ってきたわけなんだが……そこのとこ、どうなっているんだ?」
「お祈りやら儀式やらあるけど、少しぐらいならサボってもなんとかなると思うわ。もともと時間の差があるみたいだし、そこまで厳しく設定されていないのよ……ただ、早急に解決しないとならない問題があるのよ」
「そういうのを手伝いに来た。教えてくれ、俺にできることなら何でもやらせてもらう」
「実は……」
ルリの話を聞いた後、俺はすぐに準備をして移動を始める。
──周りからの干渉なんてこりごりだ、すぐに終わらせて自由にさせなければ。
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