虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
世界改め 中篇
「と言っても、もうやることはないけどさ」
俺がわざわざ手を出さずともよい、そんな環境を作るべく『SEBAS』が尽力しているのだから、今さらやることなど何もない。
凡人の意見で豊富な意見に縛りを設け、そこから新たな発想を生みださせる。
一のことで十を知る天才に対し、凡人ができることは……そう多くはないのだ。
それでも世界という歯車は、凡人たちが回しているものである。
近くに居た俺謹製のゴーレム『カエン』に対し、アンケートをしてみた。
「だからどうというわけでもないし、それがこれから何かに繋がるわけでもない……けどさぁ、俺にできることなんてとっくにやってもらっているんだよな」
「マスター、どうかなさりましたか?」
「……いや、俺独りでできることなんて全然ないんだって改めて理解した。カエン、何か住民の不満はあるか?」
「生活そのものへの不満はないようです。しかし、盛り上がりに欠けると……この調査は少し前のものですので、先ほどの世界樹に起きた騒動などにはとても楽しそうにしていましたよ」
つまり、刺激を求めているわけか。
創作物だと定番の、天国は特に何もすることがないというあれかな?
アイプスルは理想郷ではあるが、それは俺にとってであり住民である魔物たちには違うみたいだ……魔物なのだから、何かしらの刺激で楽しむ必要があるのかもしれない。
「遊べるような場所というと、もう迷宮しか浮かんでいなかったが……戦闘ですべてを解決するのも、問題か。魔物でも利用できるようにした、地球の建造物なんかを用いてみるのもいいかもしれない」
《実験的に建造していた都市部を、プレオープンしてみるのはいかがでしょうか?》
「都市部をか……まあ、全然使っていなかった場所だし、一考するべきか」
魔物たちが生活する森とは違い、:DIY:無双した俺が築き上げた現代技術の塊。
それらを一ヶ所に纏め上げ、研究や実験などを行っているのが都市部である。
しかし、無人なのだ。
最近は作業用のロボットも見かけるようになったものの、魔物はいっさいいない。
それも寂しいし……うん、やってみるか。
「そうだな……カエン、深層心理で不満を抱いているヤツをピックアップ。あと、何かやりたいことが無いかを訊いておいてくれ」
「お任せください!」
カエンは意気揚々と、すぐさま魔物たちの下へ向かう。
これ以上頼むことも無かったので、それはちょうど良かった。
「……『SEBAS』、他に改善しなければならない場所ってあるか?」
《やはり、中途半端に整えられた環境でしょうか? 旦那様がお創りになられた海と山、それら以外もしっかりとなさるべきかと》
「──やること、いっぱいありそうだな」
幸い、【救星者】と星核の操作を行えばだいたいのことはできるはずだ。
……魔物の環境として使える地形ぐらい、どうにかしておくべきだな。
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