虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
世界改め 前篇
世界樹は風兎に任せ、アイプスルに何が起きたのかを念のため調べてみることに。
神壇や世界樹内の神殿などには、見覚えのある神像があったとだけ記しておこう。
「……今度から、神様への信仰も少しだけ勧めるようにするべきか? いや、押しつけるよりは、祭りとかのイベントで無意識的に考えられるようにした方がいいか」
日本の神々は、人々と共に祭りを楽しむという一面もあったようだし。
決して質の高い信仰にはならないだろうけど、量だけならそれで補えるだろう。
「っと、今は調査だな──『SEBAS』、何か目に見える形で起きている変化は?」
《世界樹を中心として星脈が活性化し、自然に豊饒の力が与えられています。SPの回復量も大幅に増大しました》
「大規模な改革がやりやすくなるか……そうだな、産業用迷宮の方に回しておいてくれ」
《畏まりました》
名前が表すように、産業に関するフィールドや魔物が出てくる迷宮だ。
住民たちが時々そこでアイテムを集め、レベルアップをしたりしている。
そこを改革できれば、住民たちが手に入れるアイテムへの品質を向上できるだろう。
「あとは……海洋に新しい居住区ができないかの実験かな? 最近はまったく増やしていなかったけど、『アイプスル』は本来普人族以外を招き入れる理想郷の予定だったし」
《承知しました。深度はどの辺りまでに致しましょうか?》
「深海……の住民って、SAN値チェックの必要な奴らじゃないよな?」
深き者たちを招き入れるほど、俺は寛大ではないのだ。
そうなったらそうなったで、【救星者】としての能力を全力で使わせてもらおう。
「しかし、世界樹を進化させたら星脈への影響が発生……か。同様に、似たようなモノをこの世界に配置したら星脈に影響が出るのだろうか?」
《……調べてみましょうか?》
「世界樹と並ぶほどに、有名な存在って何かあったっけ? 全然思い浮かばない」
あとは……そうだな、あの世とか呼ばれる場所ぐらいしか考えが回らないな。
幻想的な物や場所には、相応の力が眠っている……みたいなそんな感じで。
「星脈が強化されれば、アイプスルの国力ならぬ星力も自ずと強くなるわけなんだよな。そうなれば【救星者】も強くなるし、住民が喜ぶギミックを追加できる」
実はレベルの無い【救星者】だが、スペックは星の格と比例しているのだ。
守るべき星が繁栄すればするほど、それを守る存在にも力が与えられる。
外では関係ないが、もしこの世界にも奴ら『侵略者』の魔の手が伸びるのであれば……そのときは【救星者】の力が必要だ。
──もしものため、星は繁栄させておかなければならないというわけである。
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