虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

世界樹進化 中篇



「──というわけで、少し残っていた神の血がここにある」

『……その凄まじい存在感、間違いなく神のものだ。しかも、かなり高位の』

「創造神様らしいからな。これを触媒に、進化を促すことにしよう」

『……待て、待つのだ。創造神様だと!?』

 風兎が興奮しているようだが、気にしていては作業が続かない。
 残っていた数滴の神の血を、濃縮した蘇生薬と万能薬を混ぜた液体に溶かす。

 そこに『真・世界樹』の樹液を流し込み、粉末状にした星鉱石を掻き混ぜていく。
 ちゃんと:DIY:が発動しているので、最適な速度や強さで混ぜられている。

『おい貴様、どういうことだ説明しろ!』

「んー? 俺が休人──星渡りの民としてここを訪れるときに、創造神様の使徒である女神様が手続きをしてくれたんだ。で、その繋がりで俺は、創造神様の権能の一部をスキル化したモノが使えるようになったんだよ」

『……余計に頭がこんがらがってきた』

 ウサギが頭を抱えるというのは、現実で動画をネットにあげればどれだけ注目されるのだろうか……なんてことを思う余裕があるのも、そんな:DIY:を発動しているからだ。

 混ぜた液体を今度はアイテムを十個載せられる魔法陣の中央に載せ、合成を行う。
 触媒は:DIY:で創造した星に関するアイテム、もしくは神に関するアイテムだ。

 ほぼ確実に失敗するはずのそれを、強制的に成功させて生みだすのは──栄養剤。

 使用したモノは間違いなく、その存在が有する才覚以上の可能性に目覚める一品。
 複製不可で一度限り、しかも素材の組み合わせの結果から植物にしか使えない。

「──というわけで、これを掛けます」

『……もっとこう、儀式などは?』

「要らないだろう。俺と風兎、それにエンキが見ていてくれるんだ……な?」

「クキューーー!」

 今日も元気に咆えるエンキを一撫でし、栄養剤を『真・世界樹』へ注いでいく。

「『SEBAS』、アイプスルのステータスに変化はあるか?」

《──確認されました。世界樹の派生に、新たに『神・世界樹』が発現しました》

「よし! じゃあ、それを実行してくれ」

《畏まりました──実行を開始します》

 途端、『真・世界樹』が揺れ動きだす。
 世界に根付いた大樹が揺れると、呼応するように世界そのものもまた揺れていく。

「うぉおおお! 死ぬ、死ぬぅううう!」

『いったい何が起こっているのだ!』

「クキューーー!」

 ああ、エンキがなんだか楽しそうだ。
 地震という概念も知らないだろうから、これが遊びだと思っているのかもな。

 なんてほっこりとしている間にも、着実に世界樹は変化している。
 ……いやだって、発光しているんだもん。


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