虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
世界樹進化 前篇
「──というわけだ。『SEBAS』、以上の意見を基に改築を行ってくれ」
《畏まりました》
家族から聞いた意見を『SEBAS』に伝え、迷宮の改良を実行してもらう。
アイプスル内の迷宮は、すべて管理してもらっているので悪い気もするけどな。
「よし、これでまずはよし。じゃあ、次をこなしていくか」
『よく来たな、『生者』』
「クキュー!」
俺が訪れているのは、空を突き抜けるほど巨大な大樹の根本。
そこにはこの星を守ってくれている、二匹の獣たちが住んでいる。
「ああ、風兎。それに……縁奇」
「クキューーー!」
ああよしよし、そんなに嬉しそうに突っ込まないでくれ……それだけで死んじゃうし、経験値がガッポリ入っちゃうから。
《エンキには経験値の獲得量を低下させる魔道具を装備させているので、問題ないかと。旦那様、それよりも……》
「ああ、そうだったそうだった。風兎、少し話があるんだが……いいか?」
『構わんが、いったい何のようだ?』
「これ──『真・世界樹』についてだ」
それを話題にすると、風兎も少々真剣みを増した空気を漂わせる。
……顔もそうかもしれないけど、ウサギが鼻をピスピスしているだけだし。
「今までずっと放置していたけど、そろそろ成長させたいんだ……ただ置いて育てておくだけじゃ、次のステップに行かないだろう」
『……そうだ。その方向性を決めるのは、この星の民と【救星者】──つまりお前だ』
「さてさて、どういう風にするのかって話だよな。正直、『宇宙樹』一択だったんだが、最近考えが改まってな……それが無くても宇宙には行けるんだし、別の進化をさせた方がいいと思ってきたんだ」
ちなみに宇宙樹となった場合、中の管がエレベーターのように人を運搬し、宇宙まで連れていってくれるようになる。
中は快適だし、宇宙への進行を行う際の拠点にすることもできる……とレベル999になったことで開示される情報にもあった。
いちおうは、人族が宇宙へ行くことは神々の想定していたことというわけだ。
問題はそれを一人で望むか、星の民たち全員が望むか……そういう話である。
「星のモノ誰もが心を通させられるようになる『心・世界樹』、不浄な存在が生まれなくなる『清・世界樹』とかいろいろあるが……神に関する世界樹も存在するだろう?」
『私には覚えが無い。が、その言いようからしてお前は知っているのだろう?』
「ああ、だから提案しに来た。この世界の進む先は、あらゆる可能性を掴めるようにしたいからな」
神様なら、それも可能だろう。
……なんせ、ありとあらゆる概念に神は宿るはずなのだから。
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