虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
パーティー勧誘 中篇
──パーティーを組もう、その言葉に対する反応はそれぞれ違った。
息子はなんだか困った表情を浮かべ。
娘は少し面倒臭そうな顔になり。
妻はとても楽しそうな笑みを見せる。
「俺、もうパーティー組んでるんだけど」
「私も、ソロだけどパーティーだし」
「いいじゃない、二人とも。家族で同じことに挑戦するのも。それに、ずっと組んでいるわけでもないでしょう──ねぇ、アナタ?」
「……グスン、そうだぞ。俺だって、二人の大切なパーティーメンバーを蔑ろにしたいわけじゃないんだ。ただな、家族との交流も大切にしてほしい……それだけなんだ」
俺はアイプスルに引き籠もっていることが多いし、瑠璃も宗教活動で忙しい。
翔はパーティーを組んでいるし、舞も従魔たちと冒険をしているのだ。
気分転換、というより互いに言葉で話す以上に交流をしたかった。
実際、EHOの使い道として親子関係をよりよくするというのは定番らしいし。
「……うーん」
「少しだけ、なら……」
「ほら、二人も良いと言っているわ。具体的にどうしたいとか、そういうことを伝えて安心させるべきじゃないかしら?」
「そうだな……ゴホン、目的地はアイプスルの迷宮だ。三人を楽しませるアトラクションに加えて、かなりの強敵を用意しているから力を発揮できるだろう」
全員がそれぞれいろんな場所を巡っているので、新鮮な場所というものは……【魔王】が支配する魔族の領域を除き、もうほとんど残っていないだろう。
なので俺も詳細を教えてもらっていない、『SEBAS』にすべてを任せて設計してもらった迷宮へ向かうことにする。
「──とまあ、そんな感じだ。何か質問がある人は挙手をするように」
「「「はい!」」」
「……じゃあ、翔から」
まさかの全員から質問が殺到。
だがきっと、悪い内容じゃないと信じて一人ずつ訊いていくことに。
「あっちの世界でどれくらいの時間、家族で冒険する予定なんだ?」
「特に決めていなかったな。それは今から話し合いで決めよう。時間になったら内部から出れるようにしておくから、約束事があるときもすぐ中断可能だ」
「い、至れり尽くせり……けど、それなら俺は問題ないよ」
創作物でも定番、一定の階層を終えると戻ることができる感じだ。
たとえ死に戻ったとしても、死んだ階層の初期地点へ飛ばされる方がいいと伝えたし。
そういった旨はしっかりと叶えてくれるのが『SEBAS』なので、おそらく間違いないだろう。
翔も納得してくれたようなので、これで一安心である。
「よかった。じゃあ、次は舞」
──さぁ、どんどん訊いていこう。
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