虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

会議作戦 後篇



「じゃあ次は……どっちがいい?」

「そうね、二人に決めてもらいましょう。真打であるこの私か、お父さんを選ぶのか」

「「…………」」

 俺と瑠璃、どちらも方向性は違うがやらかしていることに違いはない。
 だからこそ、二人は迷っている……どっちの方が先に見た方が気が楽かと。

「「(お)母さんから!」」

「……そんな、アナタに負けるなんて」

「ふっ、悪いな瑠璃。考えてみろ、わざわざ会議をしたいなんて言うヤツが、何もネタを持ち込まないはずがないだろう? 子供たちはきっと、それを察したんだよ」

「そんな……!」

 正確には、どちらがツッコミ甲斐があるかで判断したのだろう。
 まだ隠してはいるが、俺のステータスって異常だらけだし……。

「あとはシンプルに、俺だけステータスを全部書いたからだと思うぞ。みんなと違って、書く所が少ないからこの一枚に収まった」

「なっ、ズルい!」

「ズルで結構。さぁ、敗者は勝者に須らく従い、大人しくステータスを開示するのだ!」

「くっ……くっコロ!」

 夫婦漫才を呆れたように見つめる息子と娘はさておき、ついに瑠璃が書き写したステータスが明らかに──

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ステータス
名前:アズル(女)
種族:【星玉獣Lv323】
職業:【開祖Lv71】
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 ──物凄く異常だった。
 翔や舞のステータスは、まだギリギリ人族としての限界値である250内に留まっていたが……瑠璃の種族は人族じゃないからな。

「瑠璃、種族のレベルの限界値ってどれくらいなんだ? ほら、いつの間にか進化していて分からなくてさ」

「そうねぇ……たしか、750辺りがそうだと書いてあったかしら?」

 うちの妻、チートすぎる。
 あの『騎士王』だってレベルは350だと前に訊いた時教えてくれたが、それに一年足らずで届きそうになるって……。

「どうやったらそんなに早くレベルが上がるようになるんだ? ほら、もう翔と舞の思考が追いつかなくてオーバーヒートしてるし」

「私、なぜだか今は宗教の教祖をやらされているじゃない? その繋がりで、崇められると勝手に経験値が貰えるらしいの」

「まさかの姫プレイ!?」

「ふふんっ、寄生じゃないわよ。その分、デメリットがちゃんとあるんだから」

 その話を要した結果、信仰が減ると勝手にレベルが下がっていくんだとか。
 全然デメリットじゃなかった──現実も崇拝されている人が、されないわけがない!

 幸運の女神はネット業界じゃ有名で、何かあると祈る人……多いからな。
 SNSとかで『#幸運の女神』とか調べると、物凄く投稿されているし……感謝文が。

「さぁ、次はアナタよ! はたして、私を超えることができるかしら!」

 ノリに乗って悪役令嬢とかそんな感じな瑠璃には悪いが……すべては計画通り。
 作戦は成功した、いよいよ俺のステータスから本題へ移行しようじゃないか。


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