虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

会議作戦 直前



「──家族会議、実行したいと思います」

 食事を終え、一段落着いたところで俺は家族にそう切りだした。
 みながこちらを向く中、自分の言いたいことをしっかりと伝える。

「ようやく、父さんも普通の冒険ができるかもしれないんだ。それを説明する時間が欲しいし、情報の交換を行いたい」

「俺は賛成! 父さんがやっていることって面白いし、俺の話も聞いてほしい!」

「私も。前に少し聞いたけど、いろんな場所に行っているんでしょ?」

「子供たちはオッケーと。さて、残るは瑠璃だけだが……どうだ?」

 まあ、ほぼ分かり切って──

「反対、反対よ」

「じゃあ、さっそく会議を……へっ?」

「母さん?」
「えっと……なんで?」

「ふっふっふ、よくぞ聞いてくれました!」

 まるで用意していたように、芝居染みた演技と共に立ち上がる瑠璃。
 俺たちはそれを、ただただジト目で観るだけに努める。

 それを知ってか知らずか、瑠璃は香ばしいポーズをとってから──ビシッと俺に向けて指をさす……子供が真似するでしょうに。

「まずアナタ、その言いたいこととは間違いなくチート染みた何かね!」

「うん、まあ……当たっているけど」

「それに翔、舞! あなたたちも、間違いなく盛り上がるわ!」

「盛り上がる……のかな?」
「自分がそうだった、というのは本当ね」

 何を言いたいのかサッパリだった。
 子供たちと顔を見合わせるものの、誰一人として答えを見つけられずにいる。

「つまり……なぜ反対なんだ?」

「……私の話が一番つまらなくなりそうだから。ここはお茶を濁して、また後日に──」

「よし、じゃあ準備をするぞ」

「「おー」」

 準備と言っても、ただ食事を片付けるだけでそれ以外に特別なことはしない。
 瑠璃もこちらの意図が分かったのか、諦めて皿洗いなどを始める。

「……父さん、母さんが普通で終わったことあるの?」

「翔、あると思うか? 外に出かけると、それだけで何か起こすというのに」

「……そうだったね」

 立てばイベント、座ればイベント、歩いていてもイベント発生な瑠璃だ。
 最近はたしか……座ったら猫が来て、実は飼い主が有名人だったということあったみたいだし。

 そんな瑠璃が、全然イベントを起こさないとは思わない。
 いつも聞く些細な出来事によれば、いつの間にか初期地点の宗教は一つになってるし。

「そういえば、父さん。どうして急に会議がやりたいなんて言ったの? それも後で教えてくれるのは分かるんだけど……ちょっと、気になっちゃって」

「まあ、普通の冒険だからな……一度くらいは、家族で冒険がしたいかなって。ちゃんと話し合って、そういう場をな」

「うん、絶対やりたい」

 準備は整い、会議が始まる。
 さぁて、誰が一番凄いことをやっているんだか……。


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