虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
運天の改華 前篇
「よくもまあ、これだけの素材を集めてきたモノだ。『生者』、これだけあれば一生を快と悦で楽しむこともできるはずだが」
「要りませんよ、そんなもの。第一、私には愛すべき妻と子供たちが居ますので。それ以上の幸せは望みません、必要とするのは……それらを守るための力です」
すべての素材を集め終え、『錬金王』のアトリエを訪れた俺。
一部の素材はすでに加工済み、すぐにでも作業に取り掛かれることだろう。
「『運天の改華』、本来は作りだすことは奇跡に等しいとされた幻の品……だが、私に作れない錬金術の産物など無い。『生者』、任せておけ。これからその奇跡とやらを、この私が魅せてやろう」
「頼もしいです……特に気にしてはいませんが、どれくらいの時間を要するのですか? 完成するまでの間、少々『錬金王』さんたちが使う機材の一部をお借りしたく」
「それは好きに使ってくれて構わない。私は地下で行うからな。勉強させるためにユリルも連れていくとして……そうだな、丸一日は掛かるだろう。最高難易度の錬金術だ、相応の時間を要する」
「分かりました。では、よろしくお願いします。『錬金王』さん」
用意したアイテムは丁寧に魔道具の中へ仕舞い、彼女は地下室へと向かった。
その前に、弟子でありホムンクルスである現『錬金王』を捕まえていたのだが……なぜか俺のいる部屋を通った際、物凄く助けてもらいたそうな視線をしていたのを忘れない。
そう、忘れないだけだ。
成功率を僅かでもあげるために、あらゆる策は費やしておかねばならない。
……犠牲になってくれ、ユリル。
「さて、俺もやろうかな」
場所を変えて、機材が置かれた部屋。
和洋折衷……のように、さまざまな場所から集められた生産用の道具が並んでいる。
「いつも頼ってばかりじゃなくて、ネタアイテムでもいいから作れる物を作っていった方がいいからなー」
いちおう“職業系統樹”を発動させ、自身の職業を生産系上級職へ変更。
そのうえで、同じく追加できる職業スキルも生産系に変えて……準備は完了。
「しかしまあ、何を作ればいいのかさっぱりだな……『SEBAS』、俺でも作れそうな簡単なアイテムは無いか?」
《でしたら──こちらの、時属性が付与されたアイテムなどいかがでしょうか? 実用性が高く、誰でもお求めになるかと》
「売れるってことか……たしかに、ここに揮発性の高いポーションとかをセットで売ってしまえば、価値は上がるか。よし、とりあえずやってみるか!」
《レシピはこのように──》
この後、『SEBAS』に指示されるがまま大量のアイテムを生産することに。
時間が経ったら書き置きを残してログアウトし、やることを終えて再度ログイン。
その頃にはすでに一日が経過しており……『錬金王』からの伝言が書き置きに追記されていた。
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